お野菜レシピ

汐なぎ(うしおなぎ)

玉ねぎの抵抗

 玉ねぎは、この暗く、重苦しい世界から抜け出したくて、地上に精一杯手を伸ばしていた。しかし、彼に気付いてくれるものなど誰もいない。


 世を恨んではかなんで、このまま土にかえってしまおうと思っていた。しかし、その時、彼の前に光が差し込んだ。この地中から誰かが彼を引き上げてくれたのだ。


 何をされたとしても、あそこにいるよりはずっとマシだと考えていたが、現実はそんなに甘いものではなかった。


 彼は人気のないところに連れて行かれ、皮をかれて、体を綺麗に洗われる。そして、彼は硬いベッドの上に寝かされ、目の前に刃を振りかざされた。その刃は無情にも彼の体を縦横無尽じゅうおうむじんに走り粉微塵こなみじんに切りきざむ。


 彼はバラバラにされながらも、自分の身を守ろうと体液をき散らした。


 しかし、最後の抵抗とばかりこぼした体液も、彼を助けるにはいたらなかった。


 いためられ、でられ、調味料を入れて混ぜられ、彼はとうとうオニオンスープにされ、食べられてしまった。

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お野菜レシピ 汐なぎ(うしおなぎ) @ushionagi

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