『バカ犬のリードになってしまった私』は、ひとことで言えば「バカ犬」と少女の、不器用でまっすぐな絆の物語です。ある朝、自分が“リード紐”になってしまった……というユニークな展開には驚きますが、その不思議な体験を通して浮かび上がるのは、「つながり」と「さよなら」のかたち。
特に、バカ犬が「バカっていうときの かお すき!」と心の中でつぶやく場面。そこにあったのは、少女がずっと無意識に求めていた「受け入れてくれる誰か」の存在でした。言葉ではなく、体温や匂いで確かめあうような関係――それがどんなに尊く、かけがえのないものだったのか。読み終えたあと、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
優しさとユーモア、そして深い哀しみが静かに同居する、忘れがたい物語です。