人の欲望に、この愛は奪わせない。聖なる歌で邪を祓う、天使と歌姫の物語。

 十八世紀のヨーロッパを舞台に、美しい歌で悪魔を浄化してゆく男装の主人公と、彼女を愛する天使のような彼の純愛を描いた物語です。
 ファンタジー要素はあるものの、背景の歴史や習慣などは史実に寄っており、歴史モノとしても楽しめるように思います。

 流行り病で家族を失いとある夫婦に引き取られた主人公オリヴィアは、同じように引き取られてきた少年リオと打ち解け、深く信頼し合うようになります。
 不遇ではあるものの、持ち前の明るさと意志の強さで養い親の冷たい仕打ちを跳ね除けてきた二人ですが、やがて物欲に駆られた大人たちの企みが二人に襲いかかります。
 悲劇ではあるものの、二人はそれで心折れてしまうようなことはなく。
 オリヴィアもリオも、自分たちが一緒に、幸せに暮らせる道をあきらめたりはしません。今できることをさがし、まっすぐに生きようとする二人を、読んでいる側も応援したくなります。

 二人は望み通りに一緒の道を歩めるのか、悪魔とは何なのか、これから先の展開も気になるところ。ぜひご一読ください。

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