第2話 あのさ…

教室に着くなりみんなが我先にと声をかけてくる。


春霖しゅりさ、悠翔はると先輩から告られたんだって!?」


噂はなんて早く広まるものか…


「ああ、うん」


女子って怖いとつくづく思ってしまう。


「なんでそんな冷静なん!?」

「あの悠翔先輩だよ!?先輩だよ!!」

「返事は?どーしたの?」


怒涛の質問攻めに言葉を返すことさえ面倒だと思ってしまう。


「あの先輩に告られるとか実感なさすぎてさ」

「確か高3だったっけな〜」

「返事は〜」

「「「「返事はー?」」」」

「もちろん、k――」

「おーい、HRホームルーム始めるぞー」

「さとせん!今いいとこだったのに!!」

「邪魔せんといてやー」

「チャイム鳴ったの聞こえなかったか?朝日あさひ風見かざみ汐屋しおや、もしかして宿題倍にしてほしいか」

「この続きはまたあとでね、、」


わーわー言ってさとせんの話が始まる。里見さとみ先生、略して「さとせん」人当たりがよく生徒からもかなり慕われている先生だ。こんな人ほど裏の顔がないのか、とずっと考えてしまう。



 ぼーっと午前の授業をやりすごし、気づくとお昼の放送が流れだしたのがうっすらと耳に入った。こっそりと教室を抜け出し、普段通り日彩ひろと昼食を屋上で食べる。


「ねー、梨愛りあたちは呼ばなくて良かったの?」

「大丈夫だよ。呼んだほうがまともに食べれないし」

「それならまー、いいけどさ。てか、私になにか頼みたいことあんじゃないの?」


さすが日彩だ、と変なとこで感心してしまう。


「さすがひろさま〜… ノートを写させて頂いても…?」

「んなことだと思ったよ」


ほほえみながら私に向ける日彩の目は少し、母親が子供に向けるような厳しさも混じった(?)目だった。その意図はすぐに分かる。


「えーと…、はい。起きてたのは理科の授業です。虫の話が面白そうだから聞いてました…」

「あーあ、その集中力が他のことにも発揮できたら最高なのになー」

「そんなことができていれば、とっくにやってるよ〜。私だって君に迷惑かけたいと思ってるわけじゃないし☆」

「説得力ねえわ〜

 てか、虫の話って脱線の脱線みたいなのじゃんw」

「えー、でも面白かったのにー」

「いやいやいや、夜に虫たちが、紫外線の出る蝋燭を太陽と間違えて突っ込むって話でしょ?そんなん自業自得だしただの馬鹿じゃんw

てか自殺行為だしw」


あざ笑うような言い方に「私」は少しひるんでしまう。

でも、そんな自殺行為を「私」がしていると分かれば君はどんな反応するのだろうか。やっぱり「馬鹿だよ」って言うのかな。そうだとしてもやっぱり…


「あのさ、私ね――」

「あー!やっとおった!!めっっっちゃ探したんよ!!!」


勢いよく開くドアと関西なまりの高い声。

そちらを見ると予想通りの人がいる。


「げぇっ…」

「今完璧に嫌そうな顔したやろ!?」

「…べ、べつにぃ?」

「無理して嘘つかんくてもええからなw」

「いや、無理なんt…」

「で!?告白の答えはどないしたん!!!!」


疑問文のはずなのにどーしてかハテナマークが一つも見える気配がしない…

ここまで来たら答えるしかない。


「えーと… OKしました…」

「「!?!?!?」」


ん?二人驚いてる?

疑問に思って隣を見ると日彩も驚いている…


「OKしたんか!?!? 朝のときは『断る』の子音の『』が聞こえてた気がするんやけど!!」

「え、え、え?しゅ、しゅり?OKしたの?付き合ったの!?」

「あ… 二人ともそんなに驚かないで…」


の悠翔先輩は、文化部にいながらもかなり運動神経がよく1年から3年までずっとファンクラブがある。サッカー部や野球部のようなモテ組として定番な人たちと同じ土俵に立つ写真部なのだ…

この噂が広まると過激派ファンの人達に殺されかけないか心配だ。

私としては青春を楽しんでみたかった。

あくまでも、「私」としてではなく。


昼休みを親友と二人で静かに過ごす私がどのように知り合ったか…



〜2話end〜




2話目をお読みいただきありがとうございました!

今回は会話文の箇所と地の文の箇所で行を開けてみたのですが読みやすかったでしょうか?また、一話目の予定を大幅に過ぎての掲載となり楽しみにしてくださった方々申し訳ありません。今度こそ!3月中旬に三話目をあげます!

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