愛憎の媒介

 熱病のマラリアは、イタリア語で『悪い空気』を意味する言葉が由来である。

 本作では、双子の間に漂う『悪い空気』が悲劇をもたらす。彼らの一方がもう一方に抱いていた感覚こそ悪い空気であり、あぶく弾ける泥沼の瘴気が渦を巻いていた。しかし、反対側の人間が抱いていたのは悪い空気を通り越してまさに熱病であり、海底に至っても収まりはしない。

 死が二人を隔てたあとにこそ、悪い空気のもたらす恐怖の真骨頂が訪れる。

 必読本作。

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