少女たちの「愛」と「苦悩」を鮮やかに描いた紛れもない傑作

著者の過去作からのファンです。
ほんわかしたファンタジーから、殺伐としたホラーまで、幅広い技量を持つ著者が長編ホラーに着手されたということで、公開前から着目しておりました。
今回のメインテーマはずばり「いじめ」です。
ショッキングな展開にはなりますし、読んでいて心苦しくなるシーンはいくつもありますが、ひたむきな主人公「琴子」を通して、読者自身も成長させられる、そんな作品です。
愛すること。苦しむこと。生きるということ。
それについて、登場人物たちはそれぞれ違った考えを持っており、それをぶつけ合うシーンも見どころの一つです。
また、著者が得意とする幻想的な心象描写は、とても美しく残酷で、読者の心に深い印象を与えてくれます。
幅広い年齢層の読者に訴えかけることのできる、メッセージ性の強い作品だと思います。この物語を必要とする、一人でも多くの読者に届きますように。

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