表と裏から語られる歪なカップルの物語

 罰ゲームをかけた持久走大会に負けてクラスメートのイモ女・草鹿華子に告白することになった館崎亮介。断ってほしいという亮介の願いにかかわらず、華子は告白を受け入れ二人は付き合うことに。罰ゲーム期間の一か月の辛抱だと考える亮介だが、付き合い始めてから華子はどんどん垢抜けていき、気づけばクラス一の美少女となっていた……!

 さらにSNSによって二人が付き合っている事実が拡散され、周囲からは羨望の目で見られるのだが、きっかけがきっかけだけに亮介は素直に喜ぶこともできない。そんな中校内で二人の関係を揺るがす大事件が起きてしまう……!

 この一章ラストで起きる事件のインパクトが物凄く、そこまで読むと最後まで読むのを止められなくなってしまう一気読み必至な作品。一章は告白した亮介の視点から、二章は告白された華子の視点から物語が描かれることで、読んでいて気になった不自然な部分にしっかりと答えが出てくる構成も面白い。

 また刺戟的なばかりではなく「嘘の告白」というラブコメジャンルはよく見かける題材に真摯に向かい合い、人を愛することの意味を痛々しいぐらいに突き詰めているのも印象的。甘々な作品が強いカクヨムのラブコメジャンルで、苦く切なくやるせない恋愛を最後まで描き切った力作だ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

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