未来への絆


 私のお見合いは「絶対に秘密だよ」という悪ふざけで始まって、思いも寄らない展開になったが、それがかえって彼との距離を縮めてくれた。私は涼真さんのことをもっと知りたいという想いが強まりながらも、彼の笑顔に安心して微笑み返した。


 ただひとつだけ心配ごとが残っていた。お姉ちゃんは怒るだろうか……。


 私がお見合いを秘密にしていたこと、そしてそれがもしバレたら、百合子がどんな反応をするのか。彼女はいつも私のことを第一に考えてくれるけれど、この件に関しては、きっと複雑な気持ちになるはずだ。


 我が家に不安なままたどり着くと、目の前で百合子がスマホを眺めながら、元気そうに飛び跳ねていた。その足からは包帯などなかったかのように。部屋の隅で百合子が微笑んでいた。彼女の目にも涙がきらりと光っていた。彼女は私と母さんを見守りながら、静かに頷いた。


「お帰りなさい。今ちょうどいいところだったのに……」


 百合子が言うには、夢中になっていた男から連絡があったらしい。なんと、彼は奥さまと別れたそうだ。そうならそうと、もっと早く言ってくれれば良かったのに。もう本当にお姉ちゃんたら……。


 母さんがかつて見たことのないような満面の笑みを浮かべて、今日のお見合いの経緯を百合子に包み隠さず話した。彼女はその言葉を聞いて口を開いた。


「あかね、あなたが幸せなら、私も幸せよ」


 百合子の言葉に、私は心から感謝した。私たち姉妹の絆は、これからも変わらずに続いていける。


 でも、ほっとすると同時に、涼真さんの言葉が思い浮かんだ。


「僕はいい歳なのに度胸がなくて、恋に踏み切れず悩んでいたんだ。後押ししてくれたのは、イラストを褒めてくれた女の子だよ」


 彼には理由もわからずに姿を消した元カノがいたらしい。それ以来、恋ができずに悩んでいたという。何げなく我が家の窓から見える景色には、赤い実をつけるサンザシ(山査子)に暖かい色なき風が届くような恋の道が続いていた。


 その花言葉には、「山」は「幸せ」、「査子」は「探す」。ただひとつの恋という意味が綴られていた。これからも私の歩んでゆく先には色々と茨の運命が待ち構えているのだろう。


 けれど、私はこれからの未来に想いを馳せて、父が奏でる結婚式のサックスの音色と皆の笑顔を忘れずに、涼真さんと本物の幸せを築いていくことを決意した。


 私たちの恋物語は、まだ始まったばかりだ。これからも、百合子と励まし合いながら、互いに愛する彼と数えきれないほどの幸せな瞬間を重ねていくことだろう。なぜなら、私たちは運命的な一卵性双生児の姉妹なのだから……



 ――――〈完〉――――



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一日だけの約束「お見合いの黙示録」 神崎 小太郎 @yoshi1449

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