復縁を持ちかけられました

 私が振られたことで、私以上に激怒した人がいました。

 それはある意味、一番怒らせてはいけない人。そう、仲人さんです。


 振られた次の日、私の仲人さんが我が家にやって参りました。


 仲人さんは、我が家の玄関口で『だいたい、向こうから断るって何様のつもりなの!』とか『もう、向こうの仲人さんとは仕事しない!』とか、キヨっちゃんをはじめ、相手方の仲人さんのことを悪様にののしっておられます。


 私は『まあ、こちらにも原因 (病気) がありますし……』と言って、何とか怒りを鎮めていただこうと言葉を重ねました。

 その言葉が功を奏したのか、仲人さんは怒りを収めてくださいました。


 しかし、押さえ込まれたその膨大な怒りエネルギーが、あらぬ方向へ作用し始めたのです。


 仲人さんはその瞳を潤ませながら、『心配しなくても、すぐに次の縁談をセッティングしてあげるからね!』とおっしゃり始めてしまいました。


 私としては、この機会に病気の治療に専念したいという思いもあり、しばらく間を置きたかったのですが、仲人さんは『他の人を待たせてでも、依道さんの縁談を優先的にまとめてあげるから安心して!』と気合い十分です。


 仲人さんは『すぐに紹介してあげるからね!』っと言い残すと、小走りに帰って行かれました。


 のぉぉ〜ん! 明日にでもお見合いさせられそう……。


 そんなことがあったその日の晩、仲人さんから電話がかかってきました。


 まさか、もう次のお見合い話が!?


 私は、戦々恐々としながら電話に出ました。

 しかし、仲人さんから告げられたその内容は、思ってもみないものでした。

 『キヨっちゃんが復縁を申し込んできた』というのです。


 は? 昨日、断ってきたばかりじゃ?

 ア、アレ? お見合いって、こんなにお手軽に『破談のキャンセル』なんて、できたっけ?


 聞けば、キヨっちゃん『一晩、じっくり考えてみたけれど、どうしても私のことが忘れられない』と言って、断られることも覚悟の上で、再度、私に復縁を申し込んできた、というのです。


 う〜ん……、どうしようかなぁ……。


 昨日は極度の『怒り』で、悲しい気持ちなど微塵も感じていなかった私ですが、幾分落ち着いた今では、『怒り』よりも『悲しい気持ち』の方が勝っています。


 キヨっちゃんに最後に会ったのは一昨日の父の日。


 人好きのする笑顔で笑いかけてくれるキヨっちゃん……。

 プレゼントを嬉しそうに受け取ってくれたお義父さん……。

 にこにこと柔らかな笑顔でお茶菓子を勧めてくれたお義母さん……。


 和気あいあいと、花京院家でもてなされた時のことが思い浮かびます。


 やはり、このまま会わずに『破談』……とは、とても考えられませんでした。


 そんなわけで、私はこの復縁を了承することに……。


 すると、そこからのキヨっちゃんの動きは素早いものでした。


 私に逃げられる……と思ったのかどうかは定かではありませんが、一週間後には結納を取り行い、約一月半後の日程で、さっさと結婚式場を押さえてしまいました。


 えぇぇ……これ、もう逃げられないヤツやん……。


 私、すっかり外堀を埋められてしまったわけです。

 ……まあ、いいんですけど。


 その結果、お付き合い期間三ヶ月という脅威のスピードで、私たちは結婚することになりました。


 後日、私はキヨっちゃんに聞きました。何故、病気のことを私が口止めしたことになっていたのかと。


 するとキヨっちゃんは、『(両親に) 隠し事をしているのが辛くなって (両親に) 話してしまったけど、黙っていたことを (両親に) 叱られたくなくて、つい、私のせいにしてしまった』とのこと。


 ……

 …………こっ、子供かぁぁぁ!!


 そのせいで、私、キヨっちゃんに口止めを強いたみたいになっているんですけど!?


 そう反論する私に向かって『ごめんってば〜』と、ヘラヘラしながら謝ってくる きよし潔子さん。


 はぁ〜、本当に困ったお方です……。


 そんな感じで、自分の心にとても正直なキヨっちゃん。


 ですので、その後 (結婚後) もいろいろあったりするのですが、それはまた、機会 (需要) がありましたら、ということで。


 それでは、私のお見合い話はこの辺りで、めでたし、めでたし、とさせていただきます。


 最後までご高覧いただきありがとうございました。


 ー花京院 依道ー

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私とキヨっちゃんのお見合い事情 〜皆様の私を見る目が変わるかもしれないエッセイ〜 花京院 依道 @F4811472

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