第2話 我が家のワンコ

 わたしはワンちゃんを飼っている。

 室内犬だ。室内なので、とうぜんウンコやオシッコも中でする(決められた場所だが)。それらをセッセと掃除する毎日なのである。

 歯だって磨いちゃったりする。オヤツで釣って歯ブラシでシャカシャカ。

 もうどちらが飼い主か分からないレベルだ。


 そんな甘やかしっぷりの愛犬だが、とうぜん寂しがり屋に育つ。

 夜中にひとりにしようものなら、「ウォーン、ウォーン」とわたしを呼ぶのだ。

 仕方がないので一緒に寝ている。ひとつの布団で仲良く就寝だ。


 だが、このワンコ、寝るときも手間がかかる。

 勝手に布団に入ってくればいいのに、寝ているわたしの頭をポンポンと叩くのだ。


「入口がないんですけど?」


 そんな表情で見つめてくる。

 しかたがないので、掛け布団をそっと持ち上げてやる。

 すると中へと潜り込んでくるのだ。

 なんたるワガママっぷりなのだろうか。まるでどっかのお貴族さまである。


 メンドクサイので、たまにムシをするときがある。

 そうすると、いつまでもわたしの頭を叩き続けるのだ。

 やがて根負けして布団を持ち上げることになる。


 そんなワンコだが、布団に入ったときは、体をピタっと密着させてくる。

 超カワイイ。

 いろいろなワガママを忘れさせてくれる瞬間である。

 アザといというか、自分のアピールポイントをしっかりと認識しているのだろう。


 で、このワンコ。たまに屁をコク。

 「プ」とかわいらしい音で。

 なので、わたしも負けじと「ブッ」と屁をコク。するとワンコは一目散に布団から逃げていくのだ。

 なぜだ。解せぬ。


 そもそもワンコは、散歩中、放置された他の犬のウンコの匂いを嗅いでいる。

 それもかなりの近接で。もう鼻が触れんばかりである。

 同じく散歩中の犬本体のオケツだってダイレクトに嗅いだりしているのだ。

 なぜ飼い主たるわたしの屁を嫌がるのか。居間で屁をコこうものなら、お風呂場までダッシュである。

 地味に傷つくのでやめてほしい。


 この、ワガママワンコ。音にも敏感である。

 掃除機の音がたいそう嫌いらしい。嫌いすぎてわたしが掃除機を持ち上げた瞬間に、けたたましく吠える。

 掃除機の姿など見えていないのにも関わらずだ。

 ワンコは二階。掃除機は一階だ。

 見えるはずがない。

 それでも気配を感じ取って、吠えまくる。驚くべきセンサーである。


 あと、電話にも敏感だ。

 スマホがブブっとなった瞬間に吠え出す。

 相手の声がまったく聞こえない。とても困るのである。


 そのくせ目覚ましには一切反応しない。

 同じスマホからプップコプップコ音が出ているのに、平然とした顔で耳の後ろをかいたりしている。

 なんとも不思議だ。

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