はい!(挙手)
菌類が大好きです。
なので毎回めちゃくちゃ楽しく読んでます。
菌に関する蘊蓄…だけでも私は大喜びなのですが、この物語はもちろんそれだけではありません。
主人公のモルゲンは元聖女という肩書きのある微生物学者。
彼女は、人間と魔族が入り混じって生きる街で雑貨店を営んでいます。
人間と魔族が共存することになったことは素晴らしいことだけれど、それで生まれた差別もあり、
なんとか折り合いを見つけようともがきながらも、やはりおかしいことだとモルゲンは悩みます。
モルゲンの目を通して、読者はこの物語は菌の他にもう一つ大きなテーマがあるのだと気づくでしょう。
物語はまだ序盤ですが、
元勇者パーティのメンバーとの再会など、これから物語がどんな展開をみせるのかワクワクします!
美しい街や世界観の描写も素晴らしく、物語にのめり込むこと間違いなしです。
平和と共存を願い、奮闘するモルゲンの物語をお楽しみください!
かつて勇者と共に旅をし、光の聖女と呼ばれたモルゲン。
彼女や勇者たちの活躍もあり、人間と魔族は和解。平和な世の中がやって来ました。
もちろん、光の聖女なんて呼ばれていた彼女は、英雄として崇め奉られているのかなと思いきや、今の彼女がやっているのは街の雑誌屋さん。あと、パンも焼きます。
実は光の聖女なんて言われていても、その実態は微生物学者。彼女の起こした奇跡も、微生物の知識を応用したものだったのです。
今度はその知識を活かし、パンを発酵させます。ファーメンテーションというのも、発酵という意味なのだそうです。
しかし本作、元聖女がゆっくりのんびり暮らしていくだけの話ではありません。
かつての旅や聖女になった経験からモルゲンが知ったのは、この世界にある差別。
宗教がどうだ、決まりがどうだと、悲しいことにこの世界では、様々なことで理由をつけ、異物となる人々を排除しようとします。
いえ。それは現実でもあまり変わらないかもしれませんね。
差別はいけない。
そんなことはみんな分かっているのに、それでも起こってしまう。
それを無くすのは、世界を救うよりももっと大変なことかもしれません。
差別溢れる世界で、モルゲンは何を思うでしょう。そして、同じく差別溢れる世界でこの物語を読む自分たちは、それをどう感じるのでしょう。
人間と魔族が共存する町で、雑貨店を営んでいる、元聖女のモルゲン。
そんな彼女の正体は、実は微生物学者。菌を使ってパンを発酵させたり、納豆を作ったりしているのですが、この世界は菌というものに馴染みがないのですよ。
得体の知れない菌なんかで発酵させたパンは食べたく無いという人もいて、みんな偏見が過ぎる。
そして偏見は菌に対するものだけではなく、種族の違いや魔法が使えるか否か等、多くの事に存在して差別が生まれる。
そんな差別や偏見とどう向き合っていくかが、このお話のもう一つのテーマだと思っています。
菌の研究をして、仲間と仲良く語る時のモルゲンはコミカルで読んでて面白いですけど、たまに見せるシリアスな雰囲気とのギャップがすごい。
無意識のうちに抱いてしまう偏見や差別心がいかに厄介かを、読んでいて考えさせられました。
最初、タイトルを見た時に思いました。
「ファーメンテーションとは何ぞや?」
読んでいたら分かりました。『発酵』の事だそうです。
元聖女? 発酵?
となるでしょうけど、主人公の元聖女モルゲンさんは微生物による発酵を扱う人なのです。
缶詰のニシン(激臭いらしい)を食べさせようとしたり、納豆を食べさせようとしたり、色々と発酵食品であれな事をする人です。
しかし、このお話の真骨頂はそこではないと私は考えています。
ストーリーの端々にあらわれている、『差別』への問題提起です。
『異物は排除せよ』を、主人公たちは良しとしません。真正面から戦います。
差別って、自分はしていないと思っても無意識にしているかもしれません。
このお話は、ただ単にエンタメとして楽しめるだけではなく、とても深く内省を求められるお話だと思いました。
この先どうお話が進んでいくのか気になります。