光の聖女の実態は微生物学者?

かつて勇者と共に旅をし、光の聖女と呼ばれたモルゲン。
彼女や勇者たちの活躍もあり、人間と魔族は和解。平和な世の中がやって来ました。

もちろん、光の聖女なんて呼ばれていた彼女は、英雄として崇め奉られているのかなと思いきや、今の彼女がやっているのは街の雑誌屋さん。あと、パンも焼きます。
実は光の聖女なんて言われていても、その実態は微生物学者。彼女の起こした奇跡も、微生物の知識を応用したものだったのです。
今度はその知識を活かし、パンを発酵させます。ファーメンテーションというのも、発酵という意味なのだそうです。

しかし本作、元聖女がゆっくりのんびり暮らしていくだけの話ではありません。
かつての旅や聖女になった経験からモルゲンが知ったのは、この世界にある差別。
宗教がどうだ、決まりがどうだと、悲しいことにこの世界では、様々なことで理由をつけ、異物となる人々を排除しようとします。
いえ。それは現実でもあまり変わらないかもしれませんね。

差別はいけない。
そんなことはみんな分かっているのに、それでも起こってしまう。
それを無くすのは、世界を救うよりももっと大変なことかもしれません。

差別溢れる世界で、モルゲンは何を思うでしょう。そして、同じく差別溢れる世界でこの物語を読む自分たちは、それをどう感じるのでしょう。

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