第220話 新学期
舞踏会が終わって数日後。
僕はアルスとレーナ、そしてテラと共に帝都へ向かった。
一年間では風景が変わらず、いつも通り賑わっていた。
いつもの屋敷に着き、そこで一晩過ごした次の日には屋敷の前に長蛇の列ができていた。
それを嫌々ながら捌いていたが、手下(テラ)が増えたおかげで仕事はいつもよりは少なかった。
もちろんやりたくないが。
そして夕方頃。
最後の客であるナータリが怒り心頭に訪問してきた。
僕はそれを適当にあしらって、だが労いはしておかないといけないとは思ったので夕食を一緒に食べた。
そこで学園で起きたことをいくつか聞いて、その日を終えた。
そしてついにやってきた新学期初日。
徒歩で学園へと向かっている道中、周りから多くの視線を感じた。
それを気にせず校門へと着くと、早速一つの集団に囲まれた。
「はぁ〜〜何だよ?」
「第二皇子殿下がお待ちだ。すぐに来てもらおう」
どうやら僕と話があるらしい。めんどくさいので逃げようとするが、完全に包囲されている。
僕は仕方なく、アルスを連れてついて行った。
通されたのは前回と違いこじんまりとした応接室。
中には第二皇子と見覚えのない少年が座っていた。
「カエリウス殿下、お久しぶりです」
「ああ、お前も元気そうで何よりだ。生きづらそうなあんな民主主義の国に留学はさぞかし辛かっただろう」
「ええ、お陰様で。まあ、貴方様も僕がいなくなってさぞかし生きづらかったでしょう?」
お互い探り探りのため、適当な会話をする。
「それで、いきなり何ですか?急に校門前で囲まれたからびっくりしましたよ」
「それは失礼した。ただ、少し紹介したい人がいてな」
そういって隣にいた少年に合図をすると、勢いよくそいつは立ち上がる。
ブラウンのパーマがかった髪の、生意気そうな小僧。
大きく胸を反らして自己紹介をする。
「私の名前はアラド・デ・モッテンブルと申します。モッテンブル公爵家の嫡男でございます」
その家名には聞き覚えがある。
確か五大公爵の一家だったけな。
五大公爵とは、ブルボン家より一回り小さい公爵家のこと。
言わずもがなブルボン公爵家は帝国一の貴族であり、他の追随を許さない。
だけれど、ブルボン家以外にももちろん公爵家がいる。
その中でも五大公爵家と呼ばれているのが、所謂宮廷貴族の公爵家。
歴史が古く、且つ地方に分家を多く持っている。小さな派閥もある。
そんなある程度の力を有している公爵家をそう呼ぶ。
軍事力などの面では地方侯爵家に負けているが、政治的発言権では相当強い。
だから威張り散らかしている。
まあ、僕が本気を出せば一瞬で潰せるようなミジンコのような奴らだが。
「それで、そいつが何だって言うんですか?」
僕は知らぬふりを決め込む。
本当は第二皇子の思惑など分かっている。
大方自分には五大公爵の一家が付いた。
どうだ、凄いだろ!さぁ、お前もこちらに来ないかとでも言いたいのだろう。
呆れる、本当に呆れる。
こんなミジンコのような家の奴が第二皇子派になったところで全く優位性を感じない。
こんな変な茶番に数年間も付き合っていた父を含めたご先祖には敬意を表すよ。
まじで時間の無駄しかない。
「いや、ただ紹介をしようと思って」
「そうですか。だったら僕はもう戻ります。さようなら、殿下。そして・・・何とかかんとか」
名前、何だっけ?まぁ、それぐらいの存在だ。
名前も覚えてもらえず年下のくせにキーキー怒っていたが、振り返らずにその場を後にした。
「大丈夫ですか、ルイ兄様?」
「何だ、アルス?」
「流石に軽くあしらい過ぎです。もう少し構ってあげないと、ああいう人々は変なことをしだしますよ」
言うようになったな、アルス。だが、それはそうかもしれない。
「分かった、今度あちらさんの公爵家に花でも送っておこう」
「まあ、それぐらいがちょうどいいですね」
「ああ、第二大陸にある珍しい花をプレゼントするよ」
「ちなみになんですか?」
「スイレンだよ!」
ため息を吐くアルス。
スイレン、花言葉は「滅亡」。ミジンコにぴったりだよ!
教室に僕がやってくると一瞬で静まり返る。
誰もがチラチラとこちらを見ているが、そっちに目線を向けるとすぐに顔を逸らされる。
何か変な空気だが・・・あんまり変わっていないと思う。
席に着き、ホームルームが始まる。
リリスもいたが、お互い特に干渉せず。
大きな事も起こらずテラの自己紹介に移った。
そう、テラもこの学園へと入学することになった。
僕の護衛のため、本来はだめなのにもかかわらずゴリ押した。
父も、一年半前に暗殺されかけたということで流石に許してくれた。
こうして新たな新学期が始まったのだった。
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異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜 スクール H @school-J-H
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