別作品「国民的アイドルを目指していた私にとって社交界でトップを取るなんてチョロすぎる件」のスピンオフとして書かれた本作。
別作品の方もかるくご紹介しましょう。
傷つけられたアイドルが、異世界に転生します。
そこにはもちろん芸能界はなく、歌手もなく。
普通の、といってよいのか、ともかく伯爵令嬢として転生し。
だけど彼女は持ち前のパワーと明るさで切り拓いてゆきます。
さて、本作。
伯爵令嬢が現代日本に、しかも傷ついたアイドルに転生して……。
そう、つまり、上述の別作品の、裏なのです。
へえ、そういえば転生された側の人格って、どこにいっちゃうんだろう。
そうおもって、皆さん本作をご覧になるでしょう。
とっても、興味深い主題です。
わたしもそんな気持ちで読み始めて。
違う。
裏側なんかじゃ、ない。
サブストーリー、スピンオフなんかじゃ、ない。
こういう場所で、作者さまのことを言うのは、違うとおもうけど。
反則だと思うけど、でも。
作者さまの、空を見る目線。
ずっと前にもおもったことがある。
しんとした夜、天を埋める星を見上げてる。
遠く遠くを、ずっと見てる。
それがこのおはなしの作者さまの、わたしにとっての最初のイメージ。
なんか、久しぶりにその横顔、拝見した気がする。
主人公に、上をみてごらん、立ってごらん、っておっしゃって。
背に手を当てて、とん、って、ステージに押し出して。
光。
裏側なんかじゃ、ない。
決して。
僕はこちらの物語を拝読させて頂き、改めて「真っ直ぐな言葉」の魅力を感じました。
物語が新たに生まれる時、他の作品との差別化で、どんどん新しい着想やキャラを考え、またその行動や思考を奇妙に特殊化してゆく。そうすると、「おっ、なんか新しいかも」と一瞬は歓迎されるかもしれません。ただし、それがどういう危険性を孕んでいるかと言うと、「人の心、大事な想い」を忘れてしまう時があるのです。
多くの人に読んでもらうために新しい世界を作ろうとして、却って人に理解されにくいモノを書いてしまう。創作とはそんなパラドックスに陥る時があります。特に新人賞などで評価が新機軸を欲する時、どうしてもそういう風になりがちです。
でもね、そうじゃないんです。
例え1000年前であろうと、
例え1000年未来であろうと、
「人の心、大事な想い」とは不変であると僕は信じています。
この物語は設定こそ少し特殊で、筆者様の拘りもあります。でもここに生きている人達は、誰もがその人なりに「真っ直ぐ」に生きています。
ひねた人格や、卑劣な人種、嫌悪すべき展開、よくある「ざまぁ」対称な人物はおりません。そんなお手軽なカタルシスで読者様を気楽に獲得する気もなく、とある問題が起こり、それに「真っ直ぐ」にヒロインと周囲の人物達が向き合います。
それはとても難しい書き方。
なぜなら、「みんないい人だね、ありがとう!」なんて単純な書き方をすれば、あまりに説得力がありません。だからこそ、この物語がここまで生き生きとし、時に思わず涙ぐみ、そして感動を与えてくれているというのは、とても素晴らしい事だと僕は思うのです。
お勧め致します。
最後まで「真っ直ぐ」を貫いた物語、僕はとても素敵だと思いました。ラスト3話は一気読み推奨です。僕は鳥肌が立ちました。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)