孤独を抱えたエリンの旅路に、幸あらんことを。

ファンタジーなら魔法、と連想しそうなところを、敢えて「超能力」を物語内の特殊技能に据えているのが、意外性があって面白く読めました。
この設定で、物語全体の流れが引き締まり、主人公エリンの謎も、より一層引き立っているように思います。

読んでいて、特に深く感じ入ったのは、エリンの孤独の描写です。
自分が心から馴染める居場所を探す。過去を知らず、孤児院のある村でもどこか浮いている。やっと馴染めそうなところを見つけても、彼らとの間には言いようのないズレがある――

彼女自身の謎が暴かれるとき、そして、彼女の「敵」と対峙するとき。彼女は果たして、心よりの居場所を見つけられているのか?
例えそうでなかったとしても、幸せでいてほしい。そういった思いを掻き立てられる筆致です。

エリンの先行きに幸あれ。
一読者ながら、結末までお供して見届けるつもりで、これからも読ませていただきます。

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