マントヴァ侯妃イザベラ・デステ、信念と情愛の物語

フェラーラ領主エステ家から、マントヴァ侯爵フランチェスコに嫁いだイザベラ。そのときから彼女は、十代にして大忙し。マントヴァを芸術の都にすべく芸術家たちを招いたり、家族が倒れたり、ミラノやベネツィアなどとのバランス感覚に頭を痛めながら外交で大役を果たしたり、フランチェスコ不在のマントヴァを取り仕切ったり。だがフランスの不気味な足音はイタリア全土を揺るがす……。
史実だけではわからない、イザベラ・デステの信念、情愛、苦悩、迷い、押しつぶされそうな不安、胸をえぐるような悲しみといった、細やかな心の描写。そして、タペストリーのように高密度で広がる、季節に彩られた鮮やかな光景。陰謀や戦争の重苦しさと対になる表現が、イザベラやフランチェスコをはじめとする人々の人となりを、史実というよりドラマとして、目の前に活き活きと再現して見せてくれる。
歴史上の偉大な人物もやっぱり、怯えたり惑ったりする、生身の人間なのだということを思い出す。

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