第394話 アジア予選グループリーグ2戦目 日本VSベトナム


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












「ベトナムの肉とか麺とか美味しいだろうなぁ〜、フォーとかよく聞くしー」


「今はおにぎりで我慢しとけ」


 ベトナムとの試合当日を迎えた日本、試合開始1時間前に会場入りしてロッカールームで軽食として栄養士の手作りおにぎりを食べておく。


 弥一はその中で対戦するベトナムのグルメを思い浮かべ、優也に我慢しとけと言われていた。


 今日のスタメンは既に前日伝えられている。



 GK藤堂


 DF神明寺 仙道(佐) 青山


 MF緑山 月城 白羽 天宮 影山


 FW酒井 源田


 初戦のマレーシア戦からスタメンを今回はガラリと変えてきたマッテオ、色々な形を此処で試そうという狙いか。



 そして今回はベトナムにとって不利となる、ヨルダン戦で負傷してしまったエースのヴァンがスタメンから外れてしまう。

 要の選手が大事な時に出られないのは間違いなく痛手、試合前のアップでも彼らの雰囲気は明るいとは言えなかった。



 試合の時を迎え、両選手がフィールドへと姿を見せれば大歓声が彼らを出迎える。


『異国の地カタールにて行われるアジアカップ予選リーグ2戦目、日本対ベトナム!日本はこの試合で初戦のスタメンから7人の選手を入れ替えて試合に臨みます!』


『これがどう出るかですよね、ベトナムの方はヴァンが出られませんから彼の不在をどう補って来るか…何しろチームの大黒柱ですからね』



「どうなってるんだ日本、こんな人数を入れ替えて来るとは」


「多分主力を休ませる為だろう、ベトナムはエースが欠けてるからサブでも勝てると見たのかもしれない」


 スタンドから日本を偵察しようとヨルダンのスタッフが見に来ている、マレーシアには確実に勝てると見て次の日本戦へと既に目を向けていた。



「ヴァンはいないけど此処であいつばかりに頼っていられない、勝って繋げるぞ!」


 ベトナムは円陣を組んでメンバー、それを負傷したヴァンはベンチから見ている。


 ヨルダンに0ー3で既に負けているベトナムとしてはもう後がない状況、決勝トーナメントに行くなら日本に勝つ事は絶対条件だ。

 仮にこれでマレーシアがヨルダンに勝ち、ベトナムが日本に勝てば勝ち点が並びまだ分からなくなってくる。


 希望を繋げる為の試合にベトナムは臨む。



「ベトナムはもう負けられない、元々攻撃的なチームだ。立ち上がりガンガン来るだろうから守備陣特に集中だぞ」


 日本も円陣を組んでベトナムのプランはこう来るだろうと、キャプテンマークを腕に巻く藤堂が話していた。


 攻撃的に来る、だとしたら引いていたマレーシアよりもカウンター狙いやすいかなと弥一が思う中で藤堂の掛け声から皆が声を揃えてポジションへと散る。


「向こうボールだから立ち上がり集中ねー!」


 改めて弥一が声をかければ守備陣はそれぞれ頷いたり親指を立てて応えていた。


 コイントスの結果はベトナムからの先攻、攻撃的なチームで知られるのでエース不在とはいえガンガン攻めてくる可能性は高い。


 ピィーーー



『始まりました、日本対ベトナム!勝てば決勝トーナメントへ大きく近づく大事なグループリーグ2戦目となります!』


 立ち上がりから攻めてくる、かと思えばベトナムは後ろへと戻してDFでボールを回していく。


「(違う、こいつらが狙ってるのは…!)」


 後ろの方をチラっと見た後に光明は気付いた、ベトナムの狙いを。

 そうはさせんとボールを持つDFへ猛然と向かって走る。


 その前にDFは大きく前線に縦のロングパスを放り込む。


 前回マレーシア戦で先制点をお膳立てした弥一と同じようなやり方をベトナムも使って来た。

 日本の5人による厚い中盤をすっ飛ばそうと。



「(んな簡単に通すかっての!)」


 だがベトナムの狙いには気づいていたDF陣、これくらいは弥一に言われなくても彼らは全国を戦い代表に選ばれた猛者。

 自分で危険察知は出来ている。


 佐助が相手の長身FWと競り合い頭でしっかり跳ね返すと、転がるセカンドボールを影山がフォロー。

 ベトナムの狙いをしっかりと潰していく。


「こっち!」


 影山と同じボランチの春樹が手を上げてボールを要求する。

 それに影山は彼へとパスを渡せば、そのままドリブルで上がり攻撃参加。


 元々は牙裏でワンボランチとして攻守を支えていた春樹、此処は前に出る時だと判断していた。

 春樹を止めようとベトナムの選手が1人向かうも、その前に左足で右サイドの白羽へと送る。


 ボールを受けた白羽の前にはベトナムDFが目の前に居た、だが迷わず白羽はアウトサイドで左へとパスを出すとその位置に居た明が右足で白羽の前に居たDFの後ろへとダイレクトパス。


「(お、上手い!)」


 自分からボールが離れた瞬間既に走り出していた白羽、明のパスを良い球だと思いつつ受け取れば右のライン際でのワンツーに成功し、相手DFを突破して走る。


『これは白羽と緑山の上手い壁パス!白羽右サイドを独走ー!』


「逆から来てる!気をつけろー!」


 ベトナムGKが左サイドの月城が走っている事に気付く、彼らは日本とマレーシア戦を見てきて得点パターンで前線の選手がスルーして大外から走ってきた月城が得点しているのを知っている。


 この試合でもそう来るかもしれない、ベトナム守備陣にその考えが頭に一瞬浮かぶ。


 だが前線の2トップは前回と違う、彼らもスルーしてくるタイプのFWとは限らない。


 一瞬迷ったベトナム守備陣、そこに白羽が右足で低めのクロスボールを放り込む。

 反応したのは光明だ。


 GKの意識は光明に向いて身構えている、こいつが撃ってくると。


「っ!?」


 その予測を裏切るかのように光明は来たボールをスルー、球が流れて行くと直後に狼を思わせるようなスピードと迫力を持つ者が飛び込んでいた。


 狼騎が右足を目一杯出してボールに当てると、完全に光明へと釣られていたGKは動けず他のDFも対応が遅れてベトナムゴールへとボールは入っていく。



『決まったぁー!日本先制点!新たに日本代表へと入って酒井の初ゴールだ!』


『白羽君のボールに加えて源田君のスルーも上手かったですね!その前の緑山君のフォローも素晴らしい!』



「ナイスゴール、流石良い反応してくれたな」


「あれ…てめぇのボールだっただろ、撃てたんじゃねぇのか」


 日本イレブンが駆け寄りゴールを喜ぶ中、光明は狼騎の肩を軽く叩くとゴールを称賛。

 その光明に狼騎は疑問に思っていた。


 今のはスルーじゃなくても自分で行けたはずだろうと。


「まあ撃っても良かったけど、反応の良いあんたが2トップ組むなら咄嗟のスルーにも飛び付いてくれるかなって期待した。結果良かったろ?GKも騙せたし」


 短い付き合いの中で光明は狼騎の反射神経が優れている事を把握し、彼ならこれに反応してくれるだろうと思い先程のプレーを選択していた。


「食えねぇガキだなてめぇ」


「褒め言葉って事にしとくよ狼さん」


 自分のゴールよりも狼騎のゴールを演出、FWだが照皇や室に狼騎とも違うタイプ。


 光明は狼騎の言葉に笑い返せばポジションへと戻って行く。




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 弥一「どうなるかと思ったけど、なんだかんだで先制点取れてるねー」


 佐助「酒井とか特に牙裏以外で連携が不安視されていたけど、合ってんな。源田とは案外良いコンビか?」


 番「まあ、ああやって得点出来てますから悪いって事は無いですよね」


 弥一「さ、僕らDFも負けずにしっかり守ってこー、マレーシア戦みたいに暇になるとは限らないからねー」

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