第二話 ハロウィンって、なぁに?

 ある日のこと。

 柳都ったら、何だか嬉しそうな顔をしてあたしの頭に突然何かを被せたの。

 もこもこした手触りで色は真っ黒。そして先が尖ってるの。

 一体何だろう?


「これは帽子というものですよ、ディアナ。頭に被るものです。サイズがあなたに丁度良いですねぇ」


 そう言いながら、彼はあたしの顎の下で、その白くて綺麗な指を使って何かを結びつけた。

 あ、この黒いのが動かなくなった。

 あたしがどんなに頭を右左に振っても落ちない。

 頭が固定されてるようで、何か変な感じ。

 彼ったら、どうしてこんなのをあたしの頭につけたのだろう?

 何にもない方が良いのになぁ。


 すると、彼ったら「良く似合ってますよ」と言いながら顎をなでなでしてくれるものだから、あたしはついふにゃふにゃになってしまった。

 あたし、これに弱いのよねぇ。

 だって彼の指、優しくて温かくて、とっても気持ちが良いんだもの。

 背中がぞくぞくする位。


「みゃあ!?」


 あれ? この黒いのに何かがぶら下がってる!?

 え? お魚の骨!?

 これ食べても良いのかしら!?

 前足でその骨をとろうとしたんだけど、どうしても取れないの。

 すると、柳都ったらくすくす笑い出した。

 ねぇ、どうして笑ってるの?

 あたしはしっぽをぶんぶん振り回した。


「ディアナ。これは飾りです。本物の魚の骨じゃないから、食べられません」


 良く分からないんだけど、これ、食べて良いものではなさそうね。

 なあんだ、がっかり。

 彼の笑顔は爽やかでいつ見ても気持ちの良いものだから、まあいいや。


「今日はハロウィンです。もともとは、秋の収穫を祝い、悪い霊を追い出す宗教的な意味合いのある行事でした。今は仮装してお祭りするイメージが強いようです。と言うわけで、今日のあなたは魔女になって頂きました」

「みゃう?」


 そう言えば、お家の前を通り掛かる人間達、普段見かけない面白い格好をしていたわね。

 〝とりっく・おあ・とりーと!! 〟とか言ってたっけ。

 意味が良く分からないけど。

 そして、子供達はきらきらした何かをもらってた。

 そういうお祭りなのかしらね、きっと。


「可愛い可愛い私の魔女っ娘さん。おやつをあげますから、いたずらするのはナシですよ?」


 え? おやつ?

 今日のおやつは何だろう!?

 食べたい!!

 彼はつい前のめりになったあたしを優しく抱き締めてくれた。

 

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