第10話

月日は流れ



あれから3カ月が過ぎ私は安定期を迎えた。



あれからも王様は毎晩、私を呼び自分のそばに置き、私の身体の事を心配しては栄養の付くものを私に与えてくれた。



そして、王様はよくこの王宮の建物の作りについて話すようになった。



子供の頃、この王宮内にある隠れ道を見つけ、そこからよく王宮を抜けだした話や、その道を通ってジナタさんが王宮に忍び込んだ話を、外にいるジラに聞こえないように私へこそこそと話す。



王様は詳しすぎるほどその話を何度も繰り返し、私はなぜそんな話をするのか不思議でたまらなかったが、王様があまりにも真剣な眼差しで話すので私も一生懸命にその話をきいた。



他のお役人たちは正室であるホミラ様や他の側室と王様の間にもお世継ぎをと思っているのか、私とばかり夜を過ごす王様に対して不満が募り私に対して冷たい視線が注がれるようになった。



そんなある日の深夜



王様と並んで布団に入って眠っていると突然、息苦しさが襲い目を覚ました。



すると、そこには王様の姿はなくあたり一面…炎に包まれ煙が充満していた。



息苦しさから咳き込みながらも私は必死で王様を探す。



T「王様…ゴホッゴホッ…王様!!」



扉を開けるとそこにいつもいるはずのジラもニカヤはおらず私は焦る。



苦しい…



そう思っていると廊下の向こうから王様が炎に怯える様子もなく私の元へと走ってきた。



T「王様!早く逃げないと…!!火事です…!!」


Y「お前は今すぐ逃げろ…」


T「え……」


Y「今、ニカヤがジラを先に此処から追い出し炎で此処の入り口を止めた…此処へはもう誰も入らない…だから逃げるんだ!!どう行けば王宮を抜け出せるか…もう頭の中に入っているだろ?今すぐ逃げろ!!これ以上炎が強くなる前に…」



王様は私の身につけていた側室として証を剥ぎ取り布団の上に投げ、私の背中を押す。



T「王様も一緒に逃げなきゃ…!!」


Y「俺は生きていても何の意味もない…でもお前は違う…生きるんだ…例え俺が死んでも…」



王様のその言葉を聞いてあの日、コハクが言った同じ言葉が蘇る。



K「あなたには生きて欲しい。例え俺が死んでも。」



王様とコハクの姿が重なって見える私はその場から動けない。



なのに王様は私を必死で逃がそうと強くなる炎の中、背中を押す。



Y「いいから逃げろ!!この子の父親と出来るだけ早くこの町から逃げるんだ…分かったな。」



私は涙を流しながら何度も頷きお腹を庇うようにして走りだした。



なぜ、毎晩のように王様が王宮の作りについて私に詳しく話したのか…



なぜ私に隠れ道の話を何度もしたのか…



その意味がようやくわかった私は涙を堪えながら走る。



王様の言っていた隠れ道を見つけると、私は王様の話の記憶を辿りながらその道を一心不乱に進む。



お腹の赤ん坊がポコポコと動き私はお腹を撫でながら、迫り来る炎から逃げるように無我夢中で走った。




つづく


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