第8話
次の日
私は王様の側室になり、1か月が過ぎたという事でお医師によって初めての身体検査をされた。
王様と何もしていない私にとってみれば、なんの意味もない診察でしかない。
しかし、それを拒めばお役人達に不審に思われると分かっている私は、素直に言われるがままお医者様の診察を受ける。
初めの体験で少し不安に思っているとジラが私の横に来て、その不安を拭いとってくれるように優しく微笑む。
「大丈夫ですよ。」
私はそうジラに言われゆっくり横になると、目隠しとして遮られている布ごしに薄っすらと見えるお役人達は毎晩、王様の元に向かう私に期待の眼差しを向けていた。
お医者様が私の手首にそっと指を置き脈を見た瞬間、一瞬、顔色が変わり私は動揺した。
毎月来るはずのお月のモノが遅れていたからだ。
部屋の中は静まり返り、私はそんな中恐る恐る…股を開く。
下腹部に違和感を感じて私は思わずギュッと目を閉じ、お腹にかけられている布を掴むとお医者様は微笑みながら顔を上げた。
「おめでとうございます。」
その言葉を聞いて驚いた私は耳を疑い、思わず起き上がる。
しかし、そばにいるジジラによって起き上がらないようにそっと身体を押さえつけられ、また横になった。
T「え…ちょ…ちょっと待って…い…今なんておっしゃいました…か…?」
「おめでとうございます。お子を身籠られております…今が1番大切な時期です。栄養のあるものを食べ、身体を冷やさぬようお過ごしください。」
お医者様のその言葉を聞いたお役人達は大喜びをし、大騒ぎで私だけが取り残されている。
「王様に!!すぐに王様に伝えるんだ!早く!」
私はお役人のその声を聞いて慌てて止めた。
T「待って!!」
咄嗟にそう出た私の大きな声にその場にいた人間たちは不思議そうな顔をして、私をじっと見つめる。
T「わ…私から直接…王様にお伝えしたいので…今はまだ…」
動揺を隠しそう告げると、お役人は私が恥じらっているのだと勘違いしたのか嬉しそうにそれを承諾した。
私は部屋に戻るとひとり不安の闇へと吸い込まれる。
どうしよう…
王様は私の妊娠をどう思うのだろう…
王様と仲良くなれたとはいえ、私とコハクの関係を見て嫉妬心が生まれた結果…
私はこの王宮という籠の中に入れられてしまった人間。
私のお腹に宿る子がコハクの子だと知れば…
コハクとお腹の子の身が危ないかも…
そう思えば思うほど私はあまりの恐ろしさから身体が震え涙が溢れ出す。
すると、私の部屋に誰かがやって来た。
つづく
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