第6話

王宮に来て1カ月が過ぎた頃…



私と王様の仲はまるで兄妹のように気兼ねなく話をし笑い合い、毎夜のように盃を交わすような関係になっていた。



側室というのは名前ばかりで、王様は私を抱きしめる事はあっても女としていや、側室として抱くような事は決してしない。



そして、王様を知って分かったことは…



町の噂で聞いていた冷酷な印象とは真逆で、お話が好きで笑顔の多い人だと言うことと、愛に真っ直ぐで優しいのに不器用な人なのだと言う事を私は知った。



そんはある日



王様よりも先に眠りに落ちてしまった私は微かな違和感を感じて目を覚ました。



ゆっくりと目を開けるとそこには王様が立ったまま…夜空に浮かぶ月を涙を流しながら眺めていた。



私は思わず見てはいけないような気がして王様に背向ける。



すると王様の掠れた声が微かに聞こえた。



Y「ジナタ…やっぱり無理だよ…俺はお前じゃなきゃダメだ…会いたい…」



その珍しい名を聞いて私は固まる。



ジナタって…



あのジナタさん?



私と同じ町に住むジナタ兄さん?



ジナタさんは確か王宮に関わる重罪を犯したとして2年前、3年間の島流しの刑に処された。



心優しい男として町で有名だったジナタさんが、まさかそんなことをするはずがないと誰もが言っていたが、ジナタさんん本人が全てを認め島流しとされた。



しかし、その重罪とされた罪の内容は伝わってくることはなくジナタはんがどんな罪を犯したのか知る者はいなかった。



もしかしてジナタさんの犯した罪は…



王様と…愛し合ってしまったから?



王様は……



王様という立場でありながら、同性愛だということに苦しんでいたのだろうか?



私が頭の中で戸惑いながらそんな事を考えていると、王様が戻ってくる気配を感じ私は慌ててまぶたを閉じた。



この頃になると私はジラとも打ち解け、王宮の中で誰よりもジラを信頼し、たわいもない話をしたり、ジラに些細な相談をするようになっていた。



昼間には外に出て、花を一緒に見ては楽しく会話をし…



私が筆で絵を描いてはジラはとても上手だと褒めてくれた。



しかし、私が唯一…



ジラに言えなかったのは、王様と私との間には側室という立場でありながら身体の関係がないこと。



ジラは私と王様と夜を明かすたびに詳しく聞いてこようとしたが、私はそれを笑顔で誤魔化し続けていた。



あれだけ打ち解けているはずのジラなのに私自身もなぜだが分からないが、ジラにそれだけは口が裂けても言ってはいけないような気がしていた。



つづく




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