あの時と同じ

篝火

 探しているあの時の感触を優しく髪を撫でる風の感触は、心地よい気持ちにさせてくれだ。


 もう戻れないと理解してなから、追い求めている私は端からみると、さぞ滑稽に見えるだろう。


リンどうしたの?」

「なにが?」

「いつもにまして、ボーとしてるよ!」

「ひどいな……」

 そう軽口を言い合う私達。


「ただね……探しているモノがあるんだ……」

「ナニか失くしたの!?」

 私の言葉に彼女が驚く。


「失くしたって言うか……失くしてない大事なモノを探しているんだ……」

 歯切れ悪く答える私。


「?」

 わからないだろうな、私が探しているのはあの時と同じ感触だから……


「えっとね……見つからない思い出を探しているんだ!」

「ナニそれww」

「私にもわからないww」

 笑顔を浮かべる彼女に私は苦笑いで答える。


「凜のソレ、見つかると良いね!」

「うん……そうだね……」

 誰かに見つけることの出来ない私の探しモノは、何処に行けば見つかるのだろうか?


 私は今日も当てのない空の下を探してる。


 そして、展望台にたどり着いた私達は広がる町並みを眺めながら、並んでいた時に一陣の風が吹き抜ける。


「気持ちいい風ね!二人でここに来るの久しぶりだし!」

「そうだね!」

「あっ!凜、動かないでね!」

 彼女はそう言って、手を私の頭に近づけてきた。


「なに?どうかしたの?」

「頭に葉っぱが付いてるww」

「あっ!?」

(あの時と同じ穏やかな風の後のこの感触!?)

 彼女の手が私の髪に触れた瞬間が、私の求めているモノが見付かった瞬間だった。


「やっと見つけた!」

「ナニに?」

「探しモノに!かえでのおかけで!」

「ホント!」


「うん!」

 私が求めていた、安らぎの風と優しい手の温もり……あの時と同じ穏やかな想いが──今、見付かった!


「ありがとう、楓!」

「ナニが?」

「なんでもないよ!」

(やっと前に進める!──楓、好きよ!)


 忘れかけていた想いに光が差して、目の前の砂塵を一陣の風が吹き飛ばした。

 彼女が見つけた想いは、少女に届かないが確かに存在したことをその風だけが覚えている。


               完

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あの時と同じ 篝火 @ezweb

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