第一話からしっかりとした書き込みに、謎を提示することにより読者を手放しません。
少しずつ明かされていく謎、無理があるだろと主人公である零士に思わせるほどの展開。最序盤の内から、とにかく無理を強いてくるストーリーが面白いです。
第六話は思わず手に汗が滲んできますね。最近のSF映画的な印象を受けます。
HuVer-WKの設定や機能も、ロボット好きとしては素晴らしいの一言に尽きます。
白いロボット、それもその人しか動かせない──いいですよね。ロマンです。
その他設定資料も読むだけで面白いです。考え込まれているのが伝わってきます。
八話以降、視点が分岐し、謎が謎を呼ぶ展開を作り出しているのも良かったです。
アクション要素の強い零士視点、淡々と不穏な雰囲気の流れる藤堂視点にきっちり分かれている点も、物語に起伏を生み出しており、作者様のレベルの高さが窺えます。
ここでは伏せますが、十七・三十九・四十二・五十話の展開が私は特に好みでした。
登場人物に魅力がある。どんどん面白くなっていくドラマチックなストーリー展開。
描写の過不足を一切感じさせない点や、センスある台詞のかっこよさ・会話の自然さも含めて、総じてハイレベルなSF作品と言えます。
災害支援特化型として製作された人型汎用重機(Humanoid Versatility Heavy Machinery 通称:HuVer/フーバー)。アニサキスを食べてしまった先輩の代わりに、技術者の零士はドバイにHuVerとともに出張するが、そこでテロ組織の拉致にあい……。技術者の零士が慣れない操縦をしながらテロ組織に立ち向かう冒頭から引きずり込まれるような面白さ。そして日本でもテロ組織に拘束された零士を助けるために動き始めた織田女史と藤堂先輩、しかしもちろん二人も情け容赦なく事件に巻き込まれていく。
誰が味方か、誰が敵か、助けの無い異国で捕まってしまった零士の運命やいかに???
ハードな戦闘シーン、疑心暗鬼の心理戦。でも情け容赦ない展開ながら会話もキャラもコミカル風味で読みやすい。
先の想像が付かない、ハラハラドキドキのサスペンスSFです。
ロボットアニメの分類で言えば「リアルロボット」系で、情勢も現実軸に限りなく沿っているので情景がすぐ想起できました。登場人物が多いにも関わらずほぼ全てのキャラクターが埋没する事なく際立っており、それぞれの造形と役割が確立されているため群像劇にしてはとても明朗な仕上がりです。
幕間にも現時点で主人公がどんな状況に身を置いているのか、それまでの流れがどんなものだったかを一目で分かりやすく解説を置いておいてくれるので、例え間隔が開いたり流し見をしてても物語に詳しくなれます。読者を置いてけぼりにはしないという著者さまの丁寧ぶりと心意気を著作を通して感じ取れることができました。