第5話 2倍体とか6倍体とか。でっかくなぅ
さて、元気の無かったワンドラゴラもニャンドラゴラも、アルラウ姉さんとマンドラゴルァ小父さんのおかげで、普通に元気に活動できるようになってきまちた。
調子に乗って、悪役令嬢の子分を増やすのでしゅ。コンドラゴラとかポンドラゴラなどを育成するのでしゅ。
さて本日の収穫は、尻尾が二股になったニャンドラゴラ。ネコマタと名付けましゅ。ぶっとい手足は大きくなる目印でしゅ。(元ネタは蔵書の漫画『動植物のお医者さん』(民明書房刊)でしゅ。)
そして双頭のワンドラゴラ。オルトロスと名付けましゅ。ただし、実際は、双頭、というよりも、骨盤辺りでくっついた双子ちゃん、というほうが正しいと思いましゅ。単純に双頭にしてしまうと、おそらく前足が耐えきれないか、前のめりになって真っ直ぐ立てないかと思いましゅ。あと、くっついてるあたりは、「あせも」にならないかちょっと心配でしゅ。もしもケルベロスになると、真ん中の子は、かなーり暑いと思いましゅし、全体がかなり大きく重たくなる予想でしゅ。
ここまでくると、九尾のコンドラゴラや、八畳敷きのポンドラゴラを期待するのでしゅが、たぶんお家に入りきれなくなるのではないかと思いましゅ。
「ところで、ちちうえ! どうして人の目には、物が見えるのに、途中の「光線」は見えないの?」
「デュワッ スペシウム光線! ビーッムッ!」
「アメコミっぽい効果音を、Gペンで付けてもダメでしゅ」
「コロイド粒子の中にー。レーザー光をー、通してー、ですね」
「チンダル現象は知ってゆけど。天使の階段とか天使の梯子とか薄明光線とか。埃っぽい父上の書庫で虫干しすると、日光がみえゆけど。チンダル現象じゃないと、途中の光が、”見えない”のは、どうちて?」
「大気中の天使の階段と、埃の舞う書庫を一緒にしたら、ちっちゃい子の夢を壊すんじゃないかとちょっと不安なんだけど。でも、埃がキラキラしながら、移動してるのは風だけじゃなくて、小さなほうなら「ブラウン運動」もあるからね。むしろ小さい頃の私は、そっちの方が関心の的だったような気がする。
というわけで、一族の末娘よ、見るんじゃ無い、感じるんだ。目を閉じて、耳を澄ますのだー。父が手を叩いたら、右手と左手のどっちが鳴ったのか、当てるのですー」
「ちちうえっ!『無門関』みたいなことをゆって、誤魔化しちゃ、ダメなのー!」
「音波が伝わってる様子は、空気中でも水中でも見えなくって、電磁波もまた、ファラデー力線の揺らぎだから、伝わってる途中は、見えない、じゃあ、だめですか?」
「物の影は、黒っぽくなってるけど、物の影側は、暗くなっていても、全く見えないわけじゃないし。鏡の向こうには鏡面仕上げの金属面があるけど、まるで奥行きがあるみたいに見えるし。大気は見えないくらい密度が薄いのに、晴れた空は青くて、雲は白くて、夕焼け空は赤い。夜の曇り空は赤茶けてる。どうしてどうして???」
「うーん、そいつはまとめて不思議すぎて、父には、一族の末っ子にうまいこと教えられるかどうか分からないよ。反射と、あとレイリー散乱だと思うのだけれども。父の前世のヒトは、気象学よりも、化学の分析のほうでレイリー散乱を学んだもんだからなー」
「なにぃーっ! ちちうえにもーっ、分からないというのかーっ! 世界のなぞなのかー? 人類にとってのー、禁忌なのかーっ?」
「分かるようにー、説明するー、自信がー、ありませーん(きっぱり)」
「分からないのにー、言い訳するのはー、潔く無いじょー!」
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