「私って可愛いですよね?」と聞いてきた後輩に可愛くないと伝えたら可愛さをアピールしてくるようになった〜本当は可愛いと思ってるから勘弁してくれ〜
神月
第1話 可愛くない(可愛い)
「先輩、私って可愛いですよね?」
突然、後輩の
可愛いかどうかを聞かれたため、俺は春花の容姿を再度確認する。
長いサラサラな金髪に大きな目、綺麗か可愛いかで言えば可愛い整った可愛い顔立ちに平均よりも少しだけ大きな胸元。
そんな人物にこの質問をされたら、おそらくは九割以上の人が可愛いと言うと思う……そして、俺もそんな九割以上の人たちと同じで、春花のことは可愛いと思っている。
俺は心の中でそう呟きながら、返答を口にした。
「可愛くない」
「えええぇぇぇぇぇぇ!?」
さっきの自信がありそうな顔とは一変して、春花は驚愕、動揺したような表情へと変化した……俺自身、心の中で春花のことを可愛いと思っているが、あそこでもし俺がその心の赴くままに「あぁ、可愛いと思う」なんて言っていたら「ですよね〜!私って可愛いですよね〜!」みたいな感じで図に乗るのが見えていたから、あえて可愛くないと言っておくことにした。
「ど、どこが可愛くないと思うんですか……?」
春花が恐る恐るといった様子で聞いてきた。
……本当は可愛いと思っているから嘘をついているようで申し訳ないが、ここで「可愛い」と言ったら今後ずっとそのことについて言及されそうだからこの会話の間だけはその線で話をしておこう。
「タイプじゃ無い」
「タイプじゃ……無い……っ!」
春花は怒った様子で近くにあった消しゴムを俺に投げてきた。
「先輩のバカ〜!」
そして、俺たちが今居た教室の外に走り去って行った。
こんなことも日常茶飯事なため、俺は特に気にせずになんとなく窓の外を見てみた……今は春の四月終わりで、そろそろ桜が散ろうとしている時期だ。
俺は今高校二年生で、春花は高校一年生。
春花と出会ったのは、俺が今のようになんとなく桜の木の近くで桜の木を見ていたら、その桜の木の下に春花が居たことがきっかけだ。
出会いを思い出すと確かこんな会話をしていた。
「……」
「そんなに見られると恥ずかしいです〜」
「誰も君のことは見てない、桜の木を見てる」
この会話が出会いだった。
……今思えば初めから自分のことを可愛いと思っているような兆候はあったのかもしれないな。
それからは入学したての春花に学校を案内したりして、いつの間にかよく話す相手となっていた。
まだあれから一ヶ月も経っていないが、今日みたいなことは何度かあったため、明日ぐらいになったらいつも通り元気な姿を見られるだろう。
そう思って迎えた翌日。
「来たか」
今日もいつも通り、朝の時間は春花が俺の居る教室に入ってきて、俺の席までやって来た。
春花の瞳には、昨日機嫌を悪くしていた時には無かった輝きがある。
昨日は機嫌を悪そうにしていたが、予想通り一日で元通りだ。
毎朝俺のところに来ていて友達は居るのかと少し気になっていたが、前に春花のクラス前を通った時少しだけ覗いてみたら友達はたくさん居たっぽいからそのあたりは問題なさそうだ。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「一つ聞いても良いですか?」
「答えるかはわからないけど、何でも聞いて欲しい」
「昨日先輩、私のこと可愛く無いって言いましたよね?」
「言った」
昨日のことは気にしていないように見えたが、どうしてまた昨日のことを聞いて来たんだ……?
「私、その先輩の言葉で昨日決めました」
「何を……?」
「今日からは先輩が私のことを可愛いって思うように私の可愛さを抑えずに先輩と接することにします!」
「可愛さを……抑えずに?」
「今から実際に行動してみせます!」
春花は元気良くそう言うと、俺に距離を詰めて来ようとして来たので、俺はそれを横に避けることで回避した。
「どうして避けちゃうんですか!?」
「どうしてって、今俺に何かしようとしてただろ?」
その何かというのは、春花が俺に抱きつこうと────
「そうですけど、見知らない仲じゃ無くて、私のこと可愛いとも思ってないなら私が先輩に何しても平気じゃ無いんですか?」
本当は可愛いと思ってるのに平気なわけないだろ……!
元々可愛いと思ってるのに、その上さっきみたいなことをされたら……でも、この空気感で「実は可愛いと思ってました」なんてことは絶対に言いたくないし言い出せる雰囲気でも無い。
そうして、俺が春花のことを可愛いと認めるまでの間、俺は春花から様々な可愛いと思わせられるような日常を送ることになった。
◇
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◇
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