第29話 一学期(終了)
────夏休み一日前、つまり一学期終業式の日。
後少しで終業式のために体育館に移動しないといけないという時間に、美色さんが話があると言って俺のことを廊下に連れ出した。
俺は「あと少しで移動なので、話はまた今度でも……」と言ったが「そうなったら二学期になるでしょう?それに、あなた次第では短く済むから問題無いわ」と言われてしまい、反論の余地も無く大人しく美色さんと一緒に廊下に出た。
「それで、話というのは……?」
「えぇ、このことよ」
そう言うと、美色さんはスマホを取り出して、メッセージアプリの画面を俺に見せてきた。
「ど、どういうことですか……?」
その美色さんの行動だけでは全く何をしたいのかが理解できなかたので、俺は感じた疑問をそのまま口にして美色さんに聞いた。
「決まってるでしょう、連絡先を交換するのよ」
「れ、連絡先!?ど、どうしてですか!?」
「あなたに私のことを美しいと思わせたいのに、それで夏休みの約一ヶ月間を失うのはもったいなから、連絡先を知っていれば連絡して会うことができるでしょう?」
「夏休み後じゃいけないんですか……?」
「私のことを美しいと思っていない人が身近に居るのに、それを放置することなんてできないわ」
────もう美しいと思ってます。
ということを、過去に何度か伝えようとしてきたが、仮に今から伝えても今度は体育館に向かう時間ということで、どっちにしても美色さんに俺が言っていることが本当だということを信じてもらうために必要な説明の時間は無いだろう。
「わかりました、でも……もし返信が遅れたりしても怒って俺に反省文を書かせたりしないでくださいね?」
「失礼ね、そんなことしないわよ」
俺はその言葉を聞いて、安心しながら美色さんと連絡先を交換した。
「また連絡するわ、良い夏休みを」
そう言うと、美色さんはこの場を後にした。
そして、そのタイミングで廊下から教室に戻ると、ちょうど今から体育館に向かうというタイミングだったので、体育館に向かって終業式を終えた。
「一学期も終わりましたね〜!長いようで〜短かったような〜短かったようで〜長いような〜」
「どっちなんだ……」
終業式が終わった後、俺と春花は、互いの家への分かれ道に着くまで一緒に歩いていた。
「でも……このことだけはハッキリ言えます!私、高校生になって、春に冬咲先輩と出会えて良かったです!そういう意味では、この一学期は今までで一番良い時期だったかもしれません!」
「あぁ……俺も、こんなに面白い後輩を持てて良かった」
「面白いじゃなくて、可愛いですよね?」
「面白い」
俺がそう答えると、春花は不服そうだったが、それでもどこか楽しげだった。
「冬咲先輩、夏休みは私と海に行くんですから、ちゃんと水着用意しててくださいね?一緒に買いに行ってあげても良いですけど、水着はお互いにお楽しみにしたいので」
「俺は元々一人で買いに行くつもりだったが……お互いにって、春花は俺の水着姿が楽しみなのか?」
「えっ……!?な、何言ってるんですか〜!私が冬咲先輩の水着姿を楽しみにしてるわけないじゃないですか〜!」
春花は慌てた様子でそう言った。
「ふ、冬咲先輩の方こそ、お互いにのところ否定しないんですか〜?もしかして、私の水着姿楽しみにしちゃってるとか〜?」
「……」
春花の水着姿……絶対に可愛いであろうその水着姿を相手に、どうやって春花のことを可愛いと思っていることをバレないようにするのかということを、今でもまだ結論を出すことができていない。
「……冬咲先輩?え……?もしかして、本当に楽しみに────」
「そんなわけない」
「も〜!期待させないでくださいよ〜!」
春花はいつもの調子で叫んだ。
考え事をしていて、否定するのを忘れてしまっていた……危なかった。
やがて分かれ道に着くと、俺は言う。
「じゃあ、またな」
「はい!海楽しみにしてますね!」
────そして、俺たちは互いの帰路について、一学期は終了した。
明日からは、夏休みが始まる。
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