もし妖精が現実にいたら――。

妖精。ヨーロッパ各地で伝えられる羽の生えた小人。
……ではなくこの作品では人口的に作られた生命。登場する舞台も現実の日本です。
妖精も俗称ではなく、アニメや漫画で見るあのかわいらしい姿そのままで、人間と同じ精神構造や知性を持った1つの生命体です。
ウイルスの拡大により彼らの遺伝子構造がそれに対抗できる薬品に転用できると知られた時、妖精の羽ばたきから光が失われる。
社会の妖精に対する扱いが恐ろしい解像度で以って描写されます。人間は生物を傷付ける時、人に近い姿をした者ほどそれを避ける傾向があると聞きます。
しかしある程度一線を越えられる人間というものは存在し、現実にも動物虐待は溢れています。ましてや企業単位となれば……。
この非情な現実に対して裁判長と妖精の関わりがコントラストを描き出します。
彼の選んだ選択が社会をどのように動かしていくのか。とても気になる作品です。