第24話(最終話) 過去・現在・未来
第一次大戦以前、世界のユダヤ人口は中欧・東欧・ロシアに集中していた。その数
今、同じ地にユダヤ人は二百万人を
そのイスラエルの歴史を想うと、複雑な
イスラエル建国は、ユダヤ人たちが生存を脅かされないための切実な希望だった。
旧約聖書の記述を根拠に、神に約束された地がユダヤ人の手に帰するのは当然……とは流石に考えなかっただろう(と信じたい)が、自らの国家を
だが、二千年ぶりの約束の地には、既に別の民が住んでいた。二千年もの間その地で営々と耕し、産み、育んできた民が。彼らの自由も民族自決も、一顧だにされなかった。代々暮らした故郷に生きる権利さえ
すこし想像力を働かせれば
同様に、二千年その地に暮らした者たちも、新しい隣人たちの窮状切迫を想像する余裕は持ち得なかった。(
想像力の欠如が、民族間の相互無理解と憎悪を増幅させていくのだと思う。とは云えその失陥は人類通有の宿痾で、彼らに石を投げる資格を持つ者は地上に一人として在るまい。
それぞれに大義があり、譲れぬ信念があり、渇望する夢があるのだろう。
だが人の世の営み、因果起結は単純明快な一本道ではなく、複雑怪奇な迷宮なのであって、一筋縄でいくものではないとは
願わくはその日は、あまりに遅きに失しない前に来たらんことを。入植地で繰り返される悲劇、そこで喪われる人命の
ウィーン発の私の旅は、帰路も紛争地を避け長い
(了)
世界の車窓から殺し屋日記4 チェコ・オーストリア編 久里 琳 @KRN4
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます