第7話
ウェリア島への攻撃が著しく為ってより六ヶ月が経過し、
愈々団長は潔く散る事を決意した。我らは力の限りに戦ったと、団員全ての名を呼び激励した。既に命を落としている者達へも同様であった。左様にして死を決意した三百のウェリア騎士が、
裂かれた口から
者共私を聖人の如き等と善くも
愈々死の手が延べられるのを感じた。目蓋を降ろしているのかも判らぬ。しかし視界は闇であった。其の暗闇に浮かんだのは、馴染みの男と嬢の姿であった。幼少からの出来事が、此の時全て思い出された。精神が
女に生れていた為らば、何にも咎められる事無く彼と愛し合えたのであろうか。彼女との友愛の情を其の儘で交わし続ける事が出来たのであろうか。しかし、私が女で在ったなら、幼少にして彼と離ねば為らなかった。彼女と出会い交友を深める事も無かった。農民として土を耕し、絵や詩楽、文学に触れる事も無かったのだ。為らば此れで良かったのだろうか。だが私は苦しくて為らない。苦しさを数えれば際限の無い人生であった。私の中に存在する相反すものとは何であったろう。他に対するは善意であり、己に対するは悪意であった。核は男でありながら其れを取り囲む性質は女であった。其の女の部分を男の器で
私よ。私の魂よ。光と闇を受容れ賜え。其れ等は同時に私である。闇在ってこその光であり、光在ってこその闇であると知れ。私は論理で以て其れを理解してはいたが、
此の真実の祈りは、私の魂に捧げる。
聖性 天満悠月 @Tenma_Jud
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