入魂の力作。芸術に魅入られた全ての人の為に。

この小説、プロのピアニストを目指す女性と、画家として個展を開くことを夢見る男性の恋と愛の物語。

二人の愛、そして芸術への想いが交差するストーリーには奥行きがあり、感動的かつ情熱的。

夢の実現に向けて、互いを支え合いながら音楽と絵画という芸術に情熱を注ぎますが、理想と現実の狭間で喜びや苦悩に揺れる二人を実にエモーショナルに描いています。

そして音楽や絵画に関する専門的な知識や描写が極めて豊富なのですが、Webで掻き集めただけの知識とはまるで違う、作者様の研究や体験が感じられます。

後書きでご本人が「最初で最後の恋愛小説」、「これが今の私の全身全霊です。120%」という通り、正にその熱情が全編迸り、魂を込めて書く事の大切さを誰もがヒシヒシと感じるでしょう。

それ故、主人公が迷い傷つきながらも常に本気でぶつかる事での内外の葛藤や理不尽さがリアルに描かれ、共感できて読む者を熱くさせます。

更に、驚くほど丁寧な補足や解説が用意されており、音楽や絵画により詳しくなれる楽しみもふんだんに用意されていて、これ程充実したアートを題材にした作品を見た事がありません。

それらが相俟って芸術とは普段縁のない人でも理解出来て楽しめる、そんなこの作品をぜひオススメしたいと思います。

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