どうか彼女の思いが報われますように。

このお話には、見目麗しい人物たちがたくさん登場します。神秘的でいて、怪しげなほど美しい存在たち。そんな彼らはそれぞれが大きな秘密を抱えており、徐々に明らかになる真実は果たしてどんなものなのか?

冒頭から美男美女のカップルが、相思相愛な様子を見せてくれます。が、それらが徐々に綻びを見せ始め、ついには怖ろしい出来事が起こります。

物語の中心となるヒロイン夢叶は、癒しという特異な能力を持つ半妖。金髪金眼で、妖狐と人間のハーフです。ふわふわしていて砂糖菓子のような女の子で、真綿で包んで護ってあげなくちゃと思うほど。
対する夢叶の恋人・明希人は銀髪のオッドアイ。ずっと薬指に指輪をしているのですが、そのことについて夢叶は彼氏に理由を聞けません。交際一年ほどなのですが、この、相手に踏み込めない遠慮がちな関係が、お話が進むにつれて変化していきます。変化せざるを得ない状況になってくるのです。
砂糖菓子のようだった女の子が、少しずつ強い心を持っていくのも見所の一つだと思います。

特筆すべきは、美しい情景描写です。図書館の書棚を支える焦茶の柱、天まで昇る蔦の彫刻、美しい小花達。綺麗な光景が容易に目に浮かびます。物語の重要な小物である『吉祥』という本の装丁も丁寧に描かれています。ぷっくりとした立体感、彩り豊かな花達、手のひらに馴染む心地よいクッション性……手に取ってみたくなりますでしょう?

妖狐と人間が、人知れず混じり合って暮らしている世界で交錯する、美しくも怪しい者たちの思惑。
オッドアイな美青年や美しい妖狐がお好きな方に、特にお薦めなお話です!

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