この世のなごり、夜もなごり、死にに行く道、行き止まり。

心中物の傑作。

「一緒に死んでくれよ」
と、兄から電話を受けた弟は、とりあえず兄のもとへ急ぎ……

心中という題材にふさわしい、息詰まる感じ。もう行き止まりの感じ。その中にただ一筋、死への道行がすうっと延びている感じ。
この感じが、すごく良いです。
死、へ向かっていく感じ。

冷たい夜を、導火線の火がじわじわと燃えて取り返しのつかないところへ行くような、あるいは既に火がついた導火線をただ見守るしかないような、静かだけど切迫したドキドキが感じられるお話です。

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