人生を、掻き鳴らせ!

 バンド音楽を中心に物語が展開される群像劇的作品。
 そのバンドの中心メンバーである女性主人公は、子どもを連れて帰国した。しかし主人公を空港に迎えに来た妹は仰天する。主人公はあまりに痩せ、まるで男性のようにも見えたからだ。そのためか、主人公がちゃんと子育てできているのか心配になる。日本での公園デビューも、母親たちから距離をとられ、優しく接してくれたのは男の子の父親だけだった。その父親とは仲良くなれた。
 そんな中、主人公は森に深い興味を持ち、大学進学を夢見るようになる。ある程度時間を要したものの、主人公は大学進学を果たし、大学でも友人ができた。
 ただ、主人公の生活は、順風満帆とはいかなかった。実家での実母との確執。双子の一方が障害を持って生まれたというバンド仲間の話し。後輩バンドとの人間関係。そして大人だからこそつきまとう性的な関係。
 それでも主人公たちが前を向けるのは、何度も意見をぶつけ合いながら本気で音楽と向き合って来たからだ。
 
 まるで、主人公やそれを取り巻く人々の人生が、音楽を鳴らしているように感じる作品です。これから彼女たちがどのような道を歩み、どこにたどり着くのかが楽しみです。
 一話一話が短く、毎日更新されて来たという、作者様の思い入れが伝わって来る作品です。ただ、序盤の文章が箇条書き的になってしまい、なかなか感情移入しにくい部分がありました。しかし回を重ねるごとにその点も解消されています。

 是非、御一読下さい。

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