短いながら正当な伝奇小説を味わえる逸品

日本に伝わる怪異は、湿った土臭いにおいがする。
小泉八雲の「怪談」などからはそうした怪異のにおいが濃厚に漂っている気がするのですが、この小説もそうした臭いを濃厚に感じられる逸品ではないかと思います。
怪異メインの話ではなく、作品全体としては主人公が己のアイデンティティを求め葛藤する話ですが、転機となる場面で、湿った土臭い怪異の臭いを感じて欲しいと思います。