黒ずきんちゃんと虹ずきんちゃんの巻

 私、虹ずきんちゃんにとっても感謝しているの。


 彼女はモザイクの妖精で、あんなことやこんなこと、公序良俗上に反するものをオブラートに包んだ表現にしてくれるのよ。

 でもそんな虹ずきんちゃんにも欠点があるの。今回はそんな彼女の一面を紹介するわね。


 ある日のこと。

 私とお散歩中、黄色ずきんちゃんがいつものようにおもらしをしてしまった。


「うわーん!」


「大丈夫だよ、黄色ずきんちゃん。泣かないで!」


 そこに、遠くからたったか走ってくる足音が聞こえてきた。


「あの音は、もしや虹ずきんちゃん? よかった、やっぱり来てくれたんだ!」


「おまちどおさま! 必殺・虹色ミラージュ! 黄色ずきんちゃんのおもらしパンツをカモフラージュ!」


 魔女っ子ステッキが虹色に輝いて、見事、黄色ずきんちゃんの下半身がモザイクで隠された。


「ふう、これで安心。よかったね、黄色ずきんちゃん」


「グスッ、グスッ……!」


「ほら、泣きやんで。虹ずきんちゃん、いつもありがとうね」


「いいの、これがワタシの使命だから!」


 そんなとき突然、虹ずきんちゃんの触覚がピクピクと動いた。


「ピピピ! いけない、青ずきんちゃんがまたゲロしそうだわ。ちょっと行ってくるわね!」


「うん、頑張ってね〜!」


 虹ずきんちゃんは忙しそうに、たったか走っていった。

 街を守る正義のヒロインは大変だなぁ。



 またある日のこと。

 わが家では朝からあってはならない事件が起きていた。


「ママ、大変よ! 奴が出たわ!」


「早く退治しなさい、黒ずきん!」


「いやよ、ママがやってよ!」


「お店の方に行ったら信用問題よ! 絶対にあいつを逃してはダメ! 挟み撃ちにするの!」


「やだあ、怖いよお! 助けて、ミーコ!」


「ニャーン!」


 その時だった。名前を出してはいけない例のアレに、突然モザイクがかかった。


「あっ! 虹ずきんちゃん、来てくれたのね! よかった〜」


「ええ、私が来たからにはもう安心です。さあ、黒ずきん、ゴキブリを退治するのです!」


『言っちゃダメえええええ!』



 モノは隠せても言葉は隠せない虹ずきんちゃんなのであった。

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絶対秘密主義の黒ずきんちゃんと愉快な仲間たち かぐろば衽 @kaguroba

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