黒ずきんちゃんと金ずきんちゃんの巻

 私、金ずきんちゃんのことがちょっぴり苦手。


 おうちが大金持ちで、日頃から熱心に慈善活動をしているとても良い子なんだけど、趣味が悪い上にプレゼント魔なの。

 いつも笑顔で使い所に困る物をくれて、捨てづらいから参っちゃうのよ。

 でも本当に良い子だから、文句も言えなくてどうしたらいいのかわからない。


 ある日のこと。

 わが家のチャイムが鳴ったので出てみたら、金ずきんちゃんが立っていた。


「こんにちは、黒ずきんさま、じつはわたくし、あなたにプレゼントを持ってまいりましたの」


「えっ! いきなり困るよ、いつも貰ってるし……」


「わたくし、とあるウワサを聞きつけまして。あなたがコレを欲しがっていると。さあどうぞ、開けてみてくださいな」


「うーん、なんだろう。ありがとう、とりあえず開けてみるね」


 丁寧に梱包された紙をびりびりと破いていくと──


「えっ、なにこれ……」


「『黄金の小判』ですわ」


「私、こんなもの欲しがってないよ」


「あらら? わたくしは聞き耳ずきんさまから聞いたのですが」


「その出どころがどこか気になる。こんな高いの貰えないよう」


 こんな悪趣味なの要らないよう。

 お金は必要だけど、私は金ピカなんて好きじゃない。

 そんなわけで、ふたりで聞き耳ずきんちゃんに話を聞きに行くことにした。

 彼女は特殊なずきんをかぶっていて、なんと動物の声が聞こえるの。


「ねえねえ、聞き耳ずきんちゃん。私、あなたに聞きたいことがあるの」


「黒ずきん……どうかしたの……?」


「あなた、私が黄金の小判を欲しがってるってウワサ、誰から聞いたの?」


「……うん? ボクは、キミが『招き猫』を欲しがっていると、キミんちのミーコから聞いたんだ……」


「さっそくズレてるじゃない!」


「申し訳ございませんでしたわ。だってわたくし、金色が好きなんですもの」


 そんなわけで、今度は三人でミーコのもとへやってきた。

 この子はうちの看板猫。パン屋の天敵・ネズミが来ないように飼っているの。

 ちゃんとしつけてるから、衛生面は大丈夫よ。


「ねえ、ミーコ。私が招き猫を欲しがってるってウワサ、誰から聞いたの?」


「ニャーン? ニャンニャーン」


「……そんなことは言ってない。『猫の人形』が欲しいって言ったのよ……だって」


「またまたズレてるじゃない!」


「ごめん……。てっきり、お店に置くんだと思ったんだ……」


「あらあら。そうだったのですね。これにて一件落着ですわ」


 誤解がとけたところで、探偵ごっこはお開きとなった。

 ところで、どうしてこんなことを始めたんだっけ?

 なかなか面白かったからまたやろうと言って、ふたりとお別れした。


 その翌日。

 またもわが家に金ずきんちゃんがやってきた。


「こんにちは、黒ずきんさま。先日は失礼いたしましたわ。あらためまして、どうぞこちらをお受け取りください」


「えっ? もしかして……」


 包みを開けたら案の定、中から欲しかった猫の人形が現れた。


「わたくし旅行に行くので、ちょっと早いけれど誕生日プレゼントですわ」


「うう……。金ずきんちゃん、ごめんなさい……」


「まあ、泣かないでくださいまし、黒ずきんさま。いったいどうして謝るんですの?」


「グスッ……。ううん、なんでもない。ありがとう、金ずきんちゃん。この人形、大切にするね!」


 彼女が悪趣味だなんて言ったこと、本当に反省したわ。

 やっぱり金ずきんちゃんはとても良い子だった。これからも一緒に遊ぼうね。


 それから数日後。

 わが家で誕生日会が開かれて、ママからまったく同じ人形を貰った。

 ウワサの出どころが判明した。

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