オモチャ姫、立ち上がる。


 私は「ロマンチック」な恋愛の末に生まれた。

 しかし、決して後ろを振り向かない両親は、容赦なく私を置いていく。

 会話は噛み合わず、想いは通じない。

 私の身体は軋みをあげる。




 両親と私との噛み合わない会話が、独特で痛々しい。
 相手の気持ちを知ってて打ちのめす感じではなく、構っているポーズだけは見せるが、実際は壁とでも話しているような感じが悲しい。

 この作品について「かわいそう」「許せない」「こんな親がいるのか」という評を出すのはとても簡単ですが、個人的には「いるんだろうな」という気持ちでした。

 語弊を恐れず言うなら彼女は、前だけを進み続ける両親の「オモチャ」だったのだと感じました。

 例えば、愛すべき我が子を何の気なしに傷つける親となれば、非難されてしかるべきでしょうが、
 あるオモチャに飽きてしまった人がそれを放って、別のオモチャを遊んだというのならどうでしょうか。むしろ「こっちの方が面白いから仕方ないじゃん」という反論に、ぐうの音も出なくなってしまう。
 仮に壊れてしまっても、その原因が自分のせいであるか、胸に留めるかは、その人の意志で決められるはずです。そして大多数は忘れていく。

 オモチャの機嫌なんて取らないでしょうし、仮に話しかけたとしても、相手の反応なんて期待したりはしません。

 それがたまたま、人の形をしていて、人の心を持っていて、人の生活があったというだけの話なのです。



 オモチャのように扱われた彼女。

 周りとの齟齬も含め、辛い展開が多くあるのですが、それゆえに終盤における宣言は、読者に勇気と希望を与えてくれると信じています。