煌びやかな王侯貴族たちによる本格サスペンス、開幕――。

王妃候補のデルフィーヌが毒殺未遂される衝撃的な幕開けの本作。
王と王弟、二人の妃候補、息子を傀儡にして権力を握る王太后……これは、立派なサスペンスです。よくある断罪やざまぁを想像していると少し驚くかもしれません。丁寧に綴られる勢力図、王侯貴族たちの所作や立ち振る舞い、本音と建前のぶつかり合い。どれを取り上げても『上質』の一言に尽きます。

血生臭い事件も起こる中、仲を深めていくデルフィーヌと王弟のエルネスト。純粋に想い合う二人の前に立ちはだかるのは妃候補の対抗馬であるミュゼット嬢や、彼女に肩入れする王太后、そしてまさかの方面から立ち上がった真のラスボス……!

聡明なデルフィーヌが振り回されるのが「恋愛」というのも、また良いです。自分に向けられる好意に(とりわけラブの方)に疎いのも可愛い。だからこそ愛のトライアングラーになってしまった彼女の心の揺れ幅が強調されるのだと思います。

煌びやかな西洋異世界に良質なサスペンス&ミステリーが融合した、有木さんだからこそ書ける作品です。デルフィーヌとエルネストが様々な障害を乗り越えて幸せになることを祈って、続きを待ちたいと思います!

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