《昼休み 図書委員会、夏の振り返り》
夏休みが明けてすぐ、私たち三年生の図書委員は昼休みに図書室で集まった。
坂東碧生はこの日も私より先にいて、水曜日担当の席に座っていた。胸ポケットにはやっぱり、真凛ちゃんが知的オーラ、というよりも可愛らしさを振り撒いていた。
「今日もご一緒ですか?」
「うるさい」
からかうように声をかけると一蹴されて言い返された。
「井上こそ、今日は落ち着いているね」
「まあね」
本当だ。夏休み明けにこんなことを言い合える関係になるとは、思っていなかった。学年一位を前にしてパニックになっていた私が懐かしい。
クラスは違うし、高校だって間違っても同じところにいかないだろうから、きっともう関わることはほとんどないだろう。委員会のときに顔を合わせるかどうかくらいだ。
透明度九〇%くらいの恋だったからもう吹っ切れているけど、お互いのことを伝え合った今、友達として坂東碧生と会えなくなることが寂しい。
「今日もお綺麗ですよ」
「うるさいって言ってるだろ」
真凛ちゃんはきっとこれからも、きみの胸ポケットにいるのだろう。
きみの胸ポケット 松越衣那 @Mizu-Kai-Kado
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