すごい話だぞ、と思いました。
このお話との出会いはSNSです。フォロワーさん達がですね、もうすごいんですよ。すごい話だすごい話だって言うものですから、「こりゃあ私も読んでみねば!」と思ってちらっと覗いてみたのです。
まずそもそもタイトルが衝撃ですよね。
だって『老害対策法』ですよ。
いや、ぶっちゃけね?対策してくれよ、と思ったことは何度もあります。
私、小売店勤務のおばちゃんなんですけど、『老害』としか言いようのないお客様なんて毎日来店されます。それも一人二人じゃない。私が接客するのは一人でも、店全体で考えたらそれこそ十人二十人っているんじゃない?ってくらい(さすがに二十は言い過ぎか)。
やってもらって当たり前。
自分は敬われて当たり前。
もっと気遣え。
丁寧に接しろ。
お客様ですし、年長者ですし、高齢の方ですし、こっちとしてはかなり気を遣って接客してます。それでも不十分なのだそうです。書いてある字が小さいのが悪い、自分達に優しくないシステムなのが悪い、不親切だ、馬鹿にしてるのか、と。
こんな日々を送っておりますと、やっぱり考えてしまうんですよね。
この老害、どうにかならんか、と。
それが国民による投票で『どうにか出来る』ようになってしまった世界のお話です。
さすがにこんな未来は来ないだろうと思うからこそ、純粋に『エンタメ』として楽しめます。楽しめます、とか言って大丈夫かしら(笑)
でもほんとに、怖いもの見たさというかですね、読むのが止まらなくなります。
果たしてどんな結末を迎えるのか、いまからハラハラです。
年齢をかさにきて、若い人にきつく当たるお年寄り。
老害の被害遭った経験がある人は、少なくないのではないでしょうか?
この物語の舞台は、老害が犯罪となった日本。
他人に迷惑を掛ける老害の可能性があると見なされたら審判に掛けられ、老害認定されたら即死刑。
お年寄りにとってはたまったもんじゃない、まるで世にも奇妙な物語のような世界観のお話なのです。
しかしいくらなんでも、死刑はやりすぎ? お年寄りにだって事情や言い分はある?
ええ、その通りです。確かに迷惑を掛けてしまうこともあるけど、殺すのはやりすぎ。
だけど視点を変えてみたら、本人が気づかないうちに耐え難い嫌がらせをしているお年寄りも。
この物語、誰視点で見るかで、色んな見え方ができるのが面白いのです。
老害ははたして、死刑になるだけの悪なのか?
読み進めれば進めるほど話にのめり込む、少し変わったホラー。
もしかしたら近い将来、こんな世界が本当にくるかもしれません。
皆さん、老害ってどう思いますか?
まあ、良いイメージを持ってる方っていないでしょうね。
そんな老害をなんとかする素敵な法律ができました。その名も、老害対策法。
この法律では、市民が自治体の窓口に老害を通報することができ、対象となる老人はネット投票によって、死刑になるか無罪放免になるか決められます。
いやちょっとまって! いくら老害って言われるような人でも、死刑って重すぎじゃないですか?
そんな意見もあるかもしれませんが、そんな法律が施行されてしまったのです。
とはいえ、いくらなんでも人が死ぬとわかっていて、そちらに投票するなんて人はそうそういないはず。
となったらいいのですが、果たして本当にそうなるのか。投票する皆さんは、そこまで親身になって考えているのか。むしろ自分の周りにいる老害を排除してやろうと思わないのか。
通報された人だけでなく、それを取り扱う役所の人たちも大変。
何しろ自分達の対応次第で、人の生死が決まるのです。
こんな無茶苦茶な法律なんで通った!
その辺を含めて老害対策法を巡る世の中は、どんどんとんでもない方向へと進んでいくのですが、その先にはいったい何が待っているのでしょう。
老害……
私自身も長年悩まされていたもので。
この小説と同様に告発できたら、きっと65歳までの、いや、それよりも若い人たちは思うでしょうが近い年代はヒヤヒヤするのでしょう。
過去にあればよかったとか思う人もいるでしょう。
だってそのままこれが当たり前になったら数年後には自分が告発されてしまう可能性もある。
自分はよかれでも相手には不快に感じられることもある。
心が苦しくなる読み手の人もいるだろうがそのハラハラ感が良い。
自分も文中の視聴者に混ざった感覚に私はなった。
他の人はどう思うのかなぁ。
読んだ後に座談会開きたい!
高齢社会となった現代日本において、認知症や高齢ドライバーによる事故が絶えません。また、頭の固い年配者に悩まされる人々が少なくない傾向にあります。
本作の舞台は、そうした今の現状と類似した20XX年。党の賛成多数で採決した老害対策法が、即日で施行されます。担当窓口に通報された六十五歳以上の高齢者が、国民投票によって生死を委ねられる法律です。
投票の結果、老害の認定が過半数を超えれば即銃殺刑。執行の瞬間は非公開ではなく、リアルタイムで中継されるのでした。
実際の日本で起こりうるはずのない世界と思っていても、生々しさに恐怖を覚えずにはいられません。重厚感のある人間の描かれ方は、映画を見ているかのようです。
本来、老害の意味は「組織が老いることによって生じた害」であり、老齢が原因の弊害ではありません。若者が年配者のせいで冷遇されるのなら、柔軟さで乗り切ればいいのでしょうが、本作の若者らの選ぶ未来とは果たして。
敬うべきもの、守るべきものについて熟考させられる作品です。
20✖︎✖︎年の日本が舞台のホラー小説です。
65歳以上の高齢者が『老害』だと認定されたら、銃殺されてしまう社会。
老人を告発するのは、市民。
ネットで投票して、老害認定をするのも市民。
つまり名前も顔も出さない市民たちが、老人の命を裁くのです。
匿名のネット住民が人を死に追いやった事件を知る人は多いでしょう。
匿名であることの無責任さ。軽率さ。憂さ晴らし。いい加減な盛りあがり。
人間の持つ闇(病み)が、この作品にもふんだんに描かれています。
人は誰でも老いる。いつかは65歳を迎える。
わかってはいても、「審判」というお祭りの前には霞んでしまうのかもしれません。
また、すべての人間が理性ある言動を取れるわけではありません。
人の不幸が好きな人もいるでしょう。
この作品はまだ始まったばかり。
老人対策法が施行された日本社会の向かっていく先が、歪みなのか、または正しいものを取り戻すためなのか、それとも……?
先の展開は読めませんが、次々に人が死んでいく予感がします。
人の命とは?
老害とは?
正義とは?
匿名社会のあり方とは?
疑問を自身に問いながら、ダークな世界をお楽しみください。