【Track7】録音記録「付き合ってくれてありがとう」


  ◯あなたの自宅建物・自室前(昼)


  //Track1の直前。リスナーの自宅の目の前で、彼女が録音しておいた音声

  //彼女が自分で録音機に向かって話しかけている。

  SEザザザ……というノイズ音

  【DHM/正面・近】



「えっと……」



「これでいいのかな? よし。もしもーし? 聞いてる?」



「んーと、ごほん。あなたがこれを聞いている頃には、私はもうこの世には居ないでしょう!」



「……ベタすぎるかな……っていうか今の時点で幽霊なんだしこの世には居ないけど……まぁいいや」



「なんと私、生き返っちゃいました~えへへ~」



「生き返ったと言っても、なんか身体浮いてるし、幽霊として帰ってきたみたいな感じだけど。それでもここまで来られただけ神様に感謝だね」



「あ、そうそうそれで、今私は、あなたの家の前に居ます。これからあなたの家に突入しちゃおうと思いまーす」



「うっかり死んじゃったけど、私、もっとあなたと一緒に居たかったから」



「それでね? 多分私、そのうち成仏しちゃうと思うんだ。だから、せめて成仏するまであなたと一緒に居て、その間の思い出を録音しておこうと思ったの」



「それなら、私が成仏してもあなたはいつでも私を思い出せる。あと何日一緒に居られるか分からないけど、その間の思い出は、全部ここに詰めておくの」



  (間)



「で、えっと、あなたは多分私が成仏してからこれを聞いてるよね? だから、まぁ、メッセージというか、遺言的なのを遺しておこうと思います!」



  //彼女、咳払いをする



「いきなり死んじゃってごめんね。びっくりしちゃったよね。私もびっくりしたんだ。えへへ……」



「私、あなたのこと大好きなんだ。それこそ、こうやって生き返っちゃうくらい」



「それは、これから成仏するまででたっくさん伝えるつもり。どれだけあなたを愛しているか、どんなふうに愛していたか」



「だけどね。私はもう死んじゃったから、あなたと付き合い続けられないし、結婚できない。成仏しちゃえば、私はもうあなたとお話しすることもできないの」



「だからね、あなたにはちゃんと前を向いてほしいんだ。私が死んだ後も、ちゃんと、私以外の好きな人を見つけられるように」



「きっと私より、いや、私とはまた別の愛をくれる人が、いつかきっと現れる。その時は、どうか遠慮なんてしないでその人を愛してほしいな」



「私のことは忘れてとは言わないよ。むしろ、忘れてほしくない」



「けど、あなたには幸せになってほしいんだ。そして、あなたが好きになる人にも、私は幸せになってもらいたい」



「そうやって幸せになって、時々寂しくなったり、愛が分からなくなったら、私に会いに来たらいい。私は、いつでもあなたとの日常を録音したここで待ってるから」



  (間)



「これくらいかな……えへへ、なんか真面目になっちゃった。でも、許してくれるよね?」



  (間)



「……よし、じゃあ、そろそろおうちにお邪魔しようかな」



  (間)



「(囁き)私の分も、どうか幸せに生きてね」



「(囁き)大好きだよ。愛してる」



  (少し大きな間)

  //彼女、家の中に入っていく



「お邪魔します」



  (間)



  (※Track1冒頭へ繋がる)


「……久しぶり」



  //音声、徐々にフェードアウト




《了》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幽霊彼女。 景色 @Isshiki_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ