【Track3】リスト2「いっしょに通学」


  ◯駅・ホーム(昼)


  //ホームに立っているあなたと、その隣に浮いている彼女

  SE電車が走って来る音

  【DHM/左・中】



「おーおー半年ぶりだなぁ、電車くんよ! なんつって」



  SE 電車のドアが開く音

  //あなたと彼女は中に乗り込む



「さてさて、では失礼いたしまする~」



  SEドアの閉まる音。電車が走り始める音。

  //彼女、あなたの方を向いて話しかける

  【DHM/正面・中】



「さてさて~、やりたいことリストその2は、一緒に通学でーす!」



「まぁこのくらいは生きてた時もやってたけど、一緒の家から通学したことはないじゃん? だからいいでしょっ」



「あ、そうだ。言っとくけど、返事とかしちゃだめだからね。家(うち)とは違って周りに人が居るんだから」



「それに、ほら、やっぱり私の姿って誰にも見えないみたいだし。ここで返事してたら独り言言ってる変質者になっちゃうからね」



「……と、いうことは、ね……」



  【DHM/正面・近】



「ここで私が何をしようと、あなたは反撃ができない、という訳なのだよ」



  【DHM/正面・中】



「ふふふ。ま、それは後でのお楽しみとして。にしても、一緒に通学するのってこんな感じなんだね」



「なんかいつもよりわくわくするかも。ほら、学校行くのってなんだかんだ面倒くさいじゃん。でも、もし今本当に学校行くなら、ちょっと楽しいかもなーって」



「なんでだろ……まぁ、やっぱり隣に居るからかな? ……ほら、あなたが」



  (間)



「(イジるような口調で)あれ? お客さーん。ちょっと顔が赤くなってるんじゃ無いですか~?」



「(拗ねたように)って、なんか無視されるのもそれはそれで腹立つ。ま、しょうがないんだけどさ~」



  //彼女、左側に移動する

  【DHM/左・中】



「ってか、やっぱり色々変わったね。電車の中。あそこの広告とか、見たことないコスメじゃん。えぇーいいなー。試してみたいよ~。全く、私が死んだ後に良さげなやつ出すなよ~」



「見ない間にみーんな変わっちゃって。生きてるときは特に何とも思わなかったけど、こうして見るとなんか混沌、ってかカオスだよね、東京って」



「もー、変わらずに居てくれたのはあなただけだよ、全く。それでこそ私の恋人。へへへ」



  //彼女、あなたを見つめる

  【DHM/正面・中】



「……むぅ、にしてもさっきから無表情でつまんない。もうやっちゃおうかなぁ~。さっき言ってた、アレ」



「ふふ、ま、ゲームみたいなものだと思ってくれたらいいよ。題して『照れたら負けゲーム』! いぇ~い!」



「何をするかは至極簡単。私はあなたをニヤけさせようとするから、あなたはそれに耐える。それだけだよ。どう、面白そうでしょ? 電車の中だからね。変な顔しちゃダメだよ?」



「ちゃーんと、耐えてね? いい? じゃ、いくよ……」



  //彼女、右側に移動する。

  【DHM/右・近】



「まずは……」



「(吐息)ふ~~~~」



「(囁き)あのね、私、好きだよ。あなたのこと、だーいすき。愛しちゃってるの」



「幽霊になっても、こんなとこでも言いたくなっちゃうくらい、好きなんだ」



  【DHM/右・中】



「……どう? ふふ、表情変えちゃダメだからね?」



「ちゃーんと何でも無いフリして、窓の外でも眺めてるみたいに澄ました顔をして。でも、ちゃんと耳で私の声は聞いて」



  //彼女、左に移動する。

  【DHM/左・中】



「じゃ、今度はこっちで……」



  【DHM/左・近】



「(囁き)すーき。好き好き……好き。大好き。今のうちにいっぱい言っちゃうから。付き合ってたときも、今も大好き。同棲ごっこできて嬉しい。夫婦みたいで、なんかふわふわしちゃう」



  //息を大きく吸って、吐息



「すぅーー……ふーーーー」



「……あのさ、やっぱり、これ好きでしょ? あなたがこういうの好きって知らなかったんだけど。私」



「もう、言ってよ~。そしたらいくらでもやったのに」



「私、あなたの恋人なんだよ?わがままも、やりたいことも、やってほしいことだって、なんでも聞いちゃうの。だって好きな人の言うことだもん。喜んでもらいたいよ」



「(囁き)今だって、好きって思ってもらいたくて、好きって伝えたくてやってる。……ねぇ、私の気持ちって伝わってる? あなたは私の事、本当に好き?」



  //彼女、正面に移動

  【DHM/正面・中】


  //彼女、顔を真っ赤にして



「……って、もー! なにこれ超恥ずかしい! いくら周りに見えないからって、電車の中で愛を囁くとかどんな羞恥プレイだよ!」



「私の負けでいいからもう許して、あなたのポーカーフェイスに完敗だよ!」



  //彼女、両手のひらを頬にあてて話す



「あー……恥ずかし。まじか。普通に言えると思ってたんだけどな……」



「この顔を見られてないだけでまだラッキーかもね、ほんとに……。絶対赤くなっちゃってるよー、これ……」



「(誤魔化すように笑って)……ま、まぁ? そこは幽霊特権、ということで!」



「生きてる間に言えなかった分を今言っているのだよ、ふはは」



  //彼女、右に移動して

  【DHM/右・中】



「……もしかして、まだ言って欲しいの?」



  (間)



「沈黙は肯定、だよね……。もー、しょうがないなー……。あと、ちょっとだけだよ? じゃあ、ほら、一回だけ目閉じて。いいから、早く。ちょっとだけだから。」



「ん。じゃ、ちゃんと耳に集中して。聞き逃さないでね」



  (間)



  SE 電車の音が少し遠ざかる。

  【DHM/右・近】



「(囁き)大好き」



  (間)



「(囁き)愛してる」



  SE電車の音が元に戻る

  // 暫く鳴った後、徐々にフェードアウトしていく。




《Track3終了》

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