【Track1】好きすぎて幽霊になっちゃった。



《※記述規則》

・シナリオ形式

・「DHM/◯・◯」=「ダミーヘッドマイク/位置指定」





  〇自宅・居間(昼)


  //自宅の居間で一人佇むあなた。

  //静かな部屋の中で微かな物音がした後、突然右側から聞き覚えのある声がする。

【DHM/右・中】



「……久しぶり」



「……え? 無視? 私、話しかけてるんですけどー。ほら、こっち向いてよ」



  //あなたは右へ振り向き、声が正面から聞こえるようになる。

  【DHM/正面・中】



「あ、やっとこっち向いた。やっほー。見える? ……なんと! あなたの大好きだった恋人は幽霊になっちゃいました~! えへへ、びっくりした?」



「(考える間)……何その顔。……もしかして私のこと見えてないの?」



「(少しの沈黙の後)え!? ほんとに? じゃあ今私が手振ってるのも見えないの?」



  //服がぱたぱたと揺れる音だけが聞こえる。

  SE 服がバタバタ揺れる音



「そっか……。ほんとに見えてないのかぁ。それは困ったねぇ……」



「(小声で)なんだよう、神様、もっと優しくしてくれても良いじゃん」



「っていうか、私の声が聞こえるって結構びっくりする状況だと思うんですけど。なんでそんな顔してるのさ。ほら、もっと喜べ喜べー。大好きな彼女の声がもう一回聞けるんだぞ~」



「(満足げに)……うん、よろしい」



「……ふふ、まさか本当に幽霊になっちゃうなんてね。死んだ時一応祈ってみたけどさ、やっぱりこういうのはやってみるもんだね」



「神様のおかげかどうかは知らないけど、またこうやって会えて私、嬉しい。(苦笑いを浮かべながら)ま、あなたから見たら声だけなんだろうけど」



「(咳払い)こほん。とーにーかーく、見えてなくても私はここにいるからね」



「……ん。なに、やっぱりまだ実感湧かないの? もう、しょうがないなぁ。じゃあ……」



  //彼女、あなたへ近寄ってくる。

  【DHM/左・近】


  //彼女、あなたの左耳へ吐息。



「ふーっ……」



「(囁き)どーお? これで分かるでしょ、私、ここに居る」



  //彼女、少し離れる



「(少し嬉しそうに)ね、ね、今さ、びくってしてたでしょ。ふふ」



「あ。てことは、触れはしないけど吐息は送れるんだ。なるほど……」



「ふふ。じゃ、もっと……」



  //彼女、あなたの左耳へ長めに吐息



「ふーーーっ……」



「ふふ、やっぱり……」



「(囁き)これ、好きなんでしょ?」



  //彼女、あなたから離れる。

  【DHM/左・中】



「……あはは、ごめんごめん。もうしないって」



  //彼女、ふわふわと左から右に移動する。

  【DHM/右・近】



「(囁き)ま、こっちはするけどね」



  //彼女、息を大きく吸って吐息。



「ふーーっ」



  //彼女、あなたから少し離れる。

  【DHM/右・中】



「またびっくりしたでしょ。これ反撃されないからたのしいかも。えへへ」



「てかさ、やっぱり可愛いとこあるよね」



「も~いちいち照れるなって~。ほらほら、ちゃんと集中しないとどんな攻撃されるかわかんないよ~? 私の姿は見えないんだから~」



「えへへ。ま、今はこのくらいにしてあげようかな! なんて」



「ほら、私多分今すぐ成仏するって訳じゃないと思うし! 急いでイチャイチャする必要もないでしょ? いきなりあなた成分を過剰摂取したらぽっくりいっちゃうよ~」



「あ、もう死んでるんだった。えへへ……」



  //彼女、何かを思いついたかのように手を叩く。

  【DHM/正面・中】



「そうだ! せっかくだし、私が成仏するまで同棲ごっこしない?」



「……ほら、生きてるとき約束したじゃん。大学卒業したら一緒に住もうって。……もー、忘れたなんて言わせないからね?」



「しかも、実は私、あなたとやり残したこといっぱいあるんだ」



「まぁ、今はもう声だけでしか触れ合えなくなっちゃったけどさ……でも、それでもやりたいことが。いくつか」



「だからさ、協力してくれないかな。ほら、そしたら私も満足して成仏できるかもしれないし!」



「……っていうのは、ちょっと押しつけがましいかな……?」



  //あなた、頷く。

  //あなたを見て目を輝かせる彼女。



「……ほんとに!? ありがとう! ほんと、そういう面倒見がいいとこ、私、好きだよ」



  //彼女、頬を膨らませて



「(少し照れて)ん……むう……なにその反応……」



  【DHM/正面・近】



「(囁き)……好きって言ってるんだから、ちょっとは照れてよ……」



「ふふ。分かった? ……ならよし!」



  【DHM/正面・中】



「それじゃ、私が成仏するまでいーっぱい、よろしくね!」



《Track1終了》

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