主人公・嘉嶋凛汰は、父親である礼司を東京に連れ戻すべく、彼が滞在しているという櫛湊村にやって来る。けれどもその村で行われる姫依祭で、礼司の死体を発見してしまうのだった。憑坐、まれびと、供儀…不穏なワードが行き交う村で凛汰は、村を案内してくれた美月とともに、礼司を殺した犯人を探していく。
至るところに謎を紐解く鍵が散らばっており、それを探すのがすごく楽しいです。基本ジャンルはホラミスなのですが、青春を感じる描写もあってわくわくします。一筋縄ではいかない登場人物たちのふとした言動にも、なにかヒントが隠されているかもしれません。
早く真相を知りたくてうずうずすること間違いなし。ぜひみなさんも、因習村の秘密を暴きに来てください。
因習ホラーはけっこう好きでよく読むのですが、こちらの作品はどの作品とも一線を画す、読み応え抜群の面白さです!
まず、主人公がどう見ても只者じゃない。
冷静に行動し、思考する少年・凛汰には強者の風格すら漂います。
因習に衝撃を受け、振り回され、逃げ惑う他作品の主人公たちとは違い、凛汰はあくまでも冷静に振る舞っているように見えます。彼の言動が、広い視野にわたる数多くの情報を読者にもたらします。
情報量の多さは作品の敷居を高くするものではなく、より鮮明な物語の鍵を与えてくれます。文字数を感じずにどんどん読めるのは、作者のさすがの文章力によるものです。
数々のデータを理路整然と分析していく過程も面白い。
この村には、凛汰たちにはどんな運命が待ち受けるのか。ぜひ、一緒に確かめてみませんか。
父を追ってたどり着いた田舎の寒村では、”まれびと„と「憑坐さま」にまつわる秘密のお祭り、「姫依祭《ひよりさい》」があった。
その秘祭に参加した主人公凛汰の目の前で、人が死に……?
とまぁ、ストーリーの方は各自追ってもらうとして、僕は少し着眼点をずらそうと思います。
こちらの作者の一初ゆずこさん、とてもきめ細やかで厚みのある、味わい深い文章を書く方なのですが、この方がミステリーを、それも横溝正史もびっくりの「因習村系」というどろっどろの話を書くとこうなるのかという驚きがたくさんある話でした。
そしてこの重厚な筆致がありながらも、登場するキャラクターにはどこかライトな雰囲気と言いますか、ちょうどゼロ年代のラノベやPCゲームに出てきそうな軽妙な雰囲気もあったりして、このギャップもまたいい。またこういう「飲み込みやすい」キャラクターが深いことを言ったりして響くんですよ。好きなキャラクターを見つける楽しみもあると思います。多分これ、普段人を、キャラクターを、そしてその人の心情をしっかり書けるからこそのライト感なんですよね。「重いパンチも打てますよ」の人のジャブは鋭いというか、ズンッと刺さってきます。
2024/2/4時点の最新話まで読んでいますが、民俗学的知識も混ざっているのと、先述の重厚な文章×ミステリーという深みのおかげでとても考察が捗ります。他の人の応援コメントを読んでみるのも面白いかも(※ただしネタバレには気をつけて!)。
作中に出てくる民俗学的知識には、「日本文化固有の神仏入り混じった雰囲気」「独特の死生観」「禁忌とされていることを犯すゾクゾク感」などなど、「こういうの好きだぁー!」が溢れていて、これもまた読む手を止めさせません。
不思議なんですよ。さっきから言ってる通り重厚で深みのある文章で、しっかりと腰を据えて読みたいのに、先が気になってどんどん読んじゃう。僕はものすごい勢いで読みました。で、一通り読み終わった後、重めの文章を読んだ心地よい疲労感と、作品の牽引力から解放されて「ふわぁ〜」と声が出る。幸せな声ですね。寒い日にシチュー食べましたみたいな。でもそのくらい本当に満足感があるんです。
本作が他の因習村系統と異なる点のひとつに、死生観から派生する宗教観が混ぜられていることがあると思います。
神仏入り混じった、と書きましたが、日本神道と仏教、そして地方特有の民間信仰はもちろんのことながら、西洋の宗教画の知識なんかにも少し触れます。ちょっと珍しいですよね。でもごった煮感はなく、自然に溶け込んでいる……その手腕に脱帽です。すごい。
「見立て殺人」。
ミステリー好きなら一度は目にする耳にするワードですが、本作はこれを……おっと、ネタバレかな。
とにかく、「見立て殺人×ダヴィンチ」みたいな少し変わった古典ミステリー感も味わえるのも本作の旨み。こういうミステリー、100年前に出てたら覇権握って一ジャンルになってたよなぁ、なんて思いました。あれ? ということはこれから覇権を……?
さ! 読むなら今のうち!
ホラミスイチオシの作品です!
“憑坐さま”(よりましさま)が神様を崇め、怒りに触れると生贄を差し出す。
隔絶した櫛湊村で起こる奇祭、因習というだけで、ゾクゾクします。
主人公は、凛汰くんという高校生。
彼の父親は、この村に住まう画家ですが、凛汰くんは東京に住んでおり、彼もまた画家を目指しています。
しかし、凛汰くんは、画家として父を認めているものの、別居中。
東京からはるばるやって来て、よその土地から福をもたらす『まれびと』として歓迎されるも、村人は老若男女、どこかクセのある変わり者ばかり。。。
それは村に逗留して、美月という少女に出会い、姫依祭という奇祭が近づくにつれ、怪しさは強まっていきます。
そして、ついに姫依祭が催されるが……!!!
この作品は、何と言っても醸し出す雰囲気が秀逸です。
硬派な文体と敢えて多用した漢字と読みがなが、それを引き立たせています。
“憑坐さま”のためなら、他人の命など平気で差し出そうする陰惨な同調圧力があったり……。
怪しさ満点で味方か敵か分からないオカルト記者が出てきたり……。
凛汰のお父さんの奇妙な絵が飾られていたり……。
そんなおどろおどろしい村で、主人公の凛汰くんは事件の真相に迫り、また少女を護るべく、悪習に斬り込むため果敢に村人たちに抗います。
さて、この事件の結末はどこに向かうのか、目が離せません!
みんなーっ、“憑坐さま”って知ってる? 櫛湊村ってとこにいる土着の神さまなんだけどね?
この村、よその土地から来た人を“まれびと”として歓迎してくれるんだって!
なんでも、村で行われる“姫依祭”って神事に特別ゲストとして招待してもらえるみたいだよ!
お話の主人公・凛汰クンは15歳の男のコ。有名な画家のお父さんに呼ばれて、この櫛湊村にやってくるんだ!
村の神社の娘である美月ちゃんて女のコが、親切に村のことをいろいろ教えてくれるよ!
ソックリな双子の姉弟とか、物知りなオカルト記者さんとか、“まれびと”の凛汰クンを拝んでくる村人さんとか、素敵な出会いもたくさんあるよ!
やっとお父さんにも会えたけど……もうびっくりしちゃうよね、まさかお祭りであーんなことになるなんてさ!
えっ、村から出たい?
それはどうかなぁ。もう“姫依祭”は始まっちゃってるからねぇ。ちょっと難しいんじゃないかなぁ?
あれあれ? 美月ちゃんの様子もなんだか……?
結局“憑坐さま”は何かって?
……それは大事なヒミツなんだよねぇ。凛汰クンのお父さんが描いたっていう、不思議な油絵が何か鍵を握ってるかもね?
良かったらキミも櫛湊村に来てみない? 今なら“まれびと”として歓待してもらえるよ!
凛汰は父に会うため櫛湊村を訪れる。その日は神事・姫依祭が執り行われる日であり、彼もそれに参加するが――
暗闇に淡紅色や赤の映える冒頭から引き込まれました。冒頭に限らず、本当に色使いが印象的で、美しいです。
色が見えるだけでなく、文章が映像で見えるシーンもいくつもあります。それは悍ましい絵であったり光景であったりするのですが、どうしようもなく綺麗で、鮮烈です。
憑坐、まれびとといった日本的に感じるもの。楽園や知恵の実といった西洋的に感じるもの。さらには双子などの要素に、案山子やハナカイドウ等も印象的に提示され、思わず鼻をひくつかせてしまいます。
それらは絶妙に絡み合い、象徴的・示唆的に感じられ、物語のこれからをにおわせているように思えてならないのです。
圧倒的な筆力の作品をお探しの方。
民俗学、宗教、オカルトなどに興味のある方。
提示される様々なものから物語を考察したり、展開を予想したりしたい方。
ぜひ、読んでみてください。物語はまだ第2章ですので、追いついて最新話に並走することも可能です!
もっともっとたくさんの方に読まれてほしい作品です!
※2-3までを読んでのレビューです。