高校2年 慎二編 入院
何も見えない...
声を出そうにも、何かに抑えられてて出せない。
(あぁ、またこの夢か...)
何度も何度もこの夢を見ているため、この後の流れはよくわかる。
『いいか。コイツはお前のせいで、死ぬんだ。お前が、お前さえいなければ、この子は今も楽しく生きていられてただろうな。』
聞いたことない男の子声に、謎の責任を押し付けられる。殺そうとしてるのはやつなのに..
その後、聞いたことがある声が聞こえる。
『んーー!!んー!!』
ほら、こんなふうに。
僕は喋ろうとしてないのに、口が勝手に動く。なんだか、悲しみや、後悔と言った感情が湧いてくる。
こうなると、夢だと分かっていても冷静でいられなくなる。
『-----との、最後のお別れは済んだか?
...そうか。じゃあサヨナラだ!』
『んーー!!んーんー!!!』
グチャリと音がして、僕の顔に生暖かい何かがベタリと付く。何度も夢で経験しているから、この後の展開もよく分かる。
僕は今からこの謎の男に殺される。そうなることでこの夢は終わる。
「じゃあ次はお前だ、慎二。死ね!」
コレでやっと夢が終わる、そう思った。
(.....あれ?)
でも、今回は違った。いつもならここで途切れるのだが、全く終わる気がしない。
前までとの夢とは全くの別物である可能性もあるが、ここまで似ているのなら関連性がないわけがない。
混乱している頭を必死にフル稼働させて、さまざまな可能性を探そうとした。でも、コレは夢だから、脳が僕の言うことを聞かない。
(...そういえば、さっきドンッて鈍い音がした)
どうせ目が覚めると思って、気にしなかったが、謎の男が僕に死ねと言った瞬間、音がした。
それは、何かを叩いたかのような音。しかも、それなりに固いもので殴った時にしか出ない音だ。何が起きたのかわからない。
そんな時、血の匂いが僕の鼻腔を刺激した。そしてその瞬間、目隠しに使われていた布が取れた。解放された視界の中に、ある人物が映る。
「シンくん!大丈夫!?怪我は!?」
「は、るか...?」
夢の中の僕と、夢を見ている僕がシンクロする。彼女が居る理由がわからない。頭の使いすぎでクラクラしてくる。
「混乱してるかもだけど時間がないの!」
彼女は必死だった。焦っているようにも思えた。何故そこまで焦っているのか、僕には分からなかった。
「今から私が言うことは、非現実的なこと。とても信じられる内容ではないと思う。でも、信じて欲しい。
お願い!私、シンくんを助けたいの!」
「...分かった。」
そう、勝手に口が開いた。ただ、僕がこの状況にいたとしても、同じ返答をしていたと思う。
何を言われるかは分からない。でも、遥がこんなにも必死に何かを伝えようとしている。ならば、僕はそれを聞く義務がある。
僕の同意に、彼女は一瞬微笑む。でも、すぐに真面目な顔に戻り、口を開いた。
「いい?私達はル『バンッ!』っ!?」
遥が何かを言おうとした瞬間、ものすごく大きな音と狂気を感じる声がして、その音のコンマ3秒後に、遥がバタリと倒れた。
「ぇ?」
あまりにも急な出来事に、僕は言葉をまともに出す力もなくなっていた。ぼやけた視界で倒れた遥を見てみると、彼女の胸から血が出ているのが分かった。
「ぁ...ぁえ....ぇ?あ、あぁぁ......」
その状況を、受け入れられるはずがなかった。僕の脳はこの瞬間、完全に壊れた。
ドンッ
そして、壊れた脳を使う時間もなく、僕は何者かに何かに殴られて、地面に倒れ込んだ。
頭が痛い。
何かが頭から流れてくる。それが口に入ってから、初めて流れてきたのは血だと分かった。どんどん意識が遠くなっていく感覚があるのに、耳はしっかりと音を拾う。
「ダメじゃないか遥ちゃん!人を殴るときは躊躇っちゃいけない。金属バッドだって殺す気でやらないと殺せないよ!?
ほら、こうやって殴った相手に反撃されて自分が死んじゃうんだよ!?
....って、もう聞こえてないか。あー、惜しいなぁ。彼女は殺す予定じゃなかったんだけどね。ま、いいや。とりあえず、もし来世があったら是非役立ててくれ。」
聞こえてきた声は、最初に聞こえていた男の声だった。奴の言い分からして、遥に殴られたのだろう。それなのに、あんなにも楽しそうに話している。奴は狂気に満ちている...
もうすぐ夢が終わる。こんな意味がわからない夢を長いこと見せられたのだから、せめて最後にこの男の顔を見てみようと、首を動かした。
でも、僕が奴の顔を拝む前に、僕の頭蓋骨が完全に粉砕した....
~~~~~~~~~~~~
「っ!?」
頭を砕かれたと同時に、僕は慌てて飛び起きた。何度同じ夢を繰り返しても、自分に死に慣れることはなく、毎回こうして飛び起きている。
ぼやけた視界がだんだんと回復していき、僕はあることに気づいた。
(ここは?なんで僕がこんなところに...)
ベッド、ベッド近くにあるボタン、入院部屋の番号と思われるものなどがあり、多分病院であるのは分かる。
でも、なんでここに来たのかが分からない。
僕が遥と酷い別れ方をした事が多くに人にバレたあたりまでは記憶にある。でも、それから先の記憶が何ひとつなかった。
必死に思い出そうとしてみると、ぼんやりと何かが浮かびそうになるが、その瞬間に頭がズキリと痛み、意識がそちらに向いてしまう。そのせいで、記憶にかかっている霧をはらうことが出来なかった。
これ以上考えても、どうせ無駄に終わるので、僕はとりあえずお医者さんか、看護師さんを呼ぶことにした。
一瞬歩いて向かおうと思ったが、足がなぜか上手く動かないし、動かそうとすると、今までに感じた事がない痛みが身体中を走る。
それに、近くにボタンがあるのだから、わざわざ直接呼ぶ必要はないという結論に至った。
動かしづらい体を必死に動かし、ボタンを押した。そして、少しの間待つと、女性の声が聞こえてきた。
『はい。』
「あのー、えっとぉー...」
ボタンを押したものの、自分が何で入院しているのか、どんな状況なのかが分からず、言葉が詰まる。
『あ!井上さんですか!?起きられたんですね!?』
「あ、はい。」
状況はよく分からないが、さっき起きたのは間違いないので、とりあえず返事をしておいた。彼女の言い方的に、僕は数日間眠っていたのだろうか。
『すぐにお医者さんを向かわせます!』
「よろしくお願いします。」
足がうまく動かない理由なども知りたいので、とりあえず、誰かに今、僕がどんな感じなのかを教えてもらうことにした。
僕は医者が来るのをいまかいまかと待った。
それから少しの時間が過ぎ、扉がガラリと開く。そして、女性の看護師と男性の医者が入ってきた。
男性の医者が僕の方をチラリと見る。そして、ニコリと笑ってこう言った。
「元気...とは言えませんが、意識が戻られて良かったです。」
「...はい。」
掛けてくれた言葉や、笑顔だけを見れば、彼はとてもいい人だ。でも、僕の言葉は一瞬詰まった。
(この人、僕に恨みでもあるのか?)
彼は、ニコリと笑う前の一瞬、敵を見るときのような鋭い目付きで僕を睨んだ。僕には彼に何かした覚えはない。だからこそ、恐怖心が湧き出てきた。
これから僕は、どこに地雷があるか分からない状態で、地雷を踏まないように歩かないといけない。ごくりと唾を飲み込む。
「念のための確認です。井上慎二さんで間違いありませんか?」
医者は、カルテを見ながら、そう問いかけてきた。
「はい。」
「よかった。」
そういい、彼はまたニコリと笑って見せた。
この笑顔に、多くの患者さんは心が落ち着いてきたのかもしれない。でも、彼の僕に対する気持ちを知ってしまった僕にとっては、怖い表情にしか見えなかった。
「ではまず、記憶が正常であるかを確かめたいと思います。貴方はなぜここにいるか分かりますか?」
カルテを見ながら、医者がそう尋ねる。
ここで、変に嘘をついても、何の利益もないので、素直に答えることにした。
「それが、よく分かりません。」
「なるほど...」
言葉に細心の注意を払っているので、神経が敏感になっている。そのためか、サラサラとペンが紙を走る音がやけにうるさく聞こえた。
ペンがぴたりと紙の上で止まると、また質問が飛んできた。
「それならば、何故ここにいるのかも分からない感じで大丈夫ですか?」
「はい。」
「分かりました。」
そう言いながら、彼はペンを再び走らせた。僕はあまり質問されてないので、少しの情報しか得られてないはずなのだが、大分長いこと、何かをカルテらしきものに書いている。
書き終わったのか、医者は、持っていたものを近くの机に置き、「ふぅ」と息を吐いてから、僕に向き直った。
「では、貴方がどんな状況かをお伝えします。いいですか?」
「はい。」
断る理由はないし、自分自身、何故こんなことになっているのかを知りたかったので、すぐに返事をした。
「では、お教えします。」
それから僕は、彼から、いろいろなことを伝えられた。
僕が飛び降りた事、この病院に運ばれて9日間眠っていた事、体の骨が所々折れてしまっているが幸いなんとか治る事、全治は3ヶ月、学校に通えるようになるのは5月から、などなどを知る事ができた。
...教えてもらってこれを言うのはひどいと思うけれど、正直信じられない。だって、僕に自殺する勇気なんてないはずだ。
中学の頃も、遥に止められなかったとしても、怖くて死ぬ事ができなかったと思う。だって、僕には人と話す勇気すらほぼほぼない。そんな人が、死を選べるだろうか。少なくとも、僕には無理だ。
...考えても、僕には過ぎてしまったことなので、もう分からない。なので、とりあえず、医者が言ったことが事実だということにした。
今後について聞くと、とりあえず4月中旬までは入院することになるらしい。
その間、飛び降りた理由が精神的なものの可能性もあるため、カウンセリング的なこともやることになった。
お医者さんは、それらのことを伝えると、最後にお大事にと言って、部屋から出ていった。
ちなみに、話している途中、睨まれたり、殺意を感じたりすることがなかった。なので、彼が最初に出した明確な殺意はなんだったのか分からないままとなった。
それも不思議だが、それより謎なことがある。
「....」
「....」
医者の方は出ていったのだが、看護師の方が何故か残っているのだ。しかも、何も話さない。ただ立っているだけだ。
勇気を出して話しかけるべきなのかもしれないが、僕にそんなことができるわけがない。
そのため、沈黙がしばらく続いた。
数分が、ものすごく遅く感じる状態で経過していき、だんだんとこの気まずい時間が辛くなってきた。そのため、視線が自然と天井の方へ向く。
そんな時、不意に看護師さんが口を開いた。
「風の噂で聞いたのですが、彼女さんと別れたのは本当ですか?」
あまりにも急に、プライベートについて踏み込んできたので、僕は思わず目を丸くした。
本当のことを言うべきか。嘘を言って誤魔化すべきか。より気まずくならないか。プライベートを他人に教えていいのか。
いろんな考えが浮かんでくる。そのせいで、はいともいいえとも言えない。相手を待たせていると思うと、焦りが出てきて、より考えがまとまらない。
「...大体わかりました。」
何も答えない僕に失望したのか、看護師さんは真顔のまま、そう答えた。そして、そのまま、扉の方に向かって歩き出した。
別に他人の機嫌を取らないといけないなんて事はないが、なんとなく気持ちが沈んでいくのがわかった。
(相変わらず僕は変われないままなんだ...)
そう思ってしまい、視線が下に向く。自分の変わらない情けなさに、悔しくて思わず拳をギュッと力が入る。
こんなにも悔しいはずなのに、変わるのがまだ怖いと思っている自分自身に腹が立つ。
「ひとつ、いいですか。」
そんな時、声をかけられる。そちらを向くと、看護師さんがいた。まだいたのかと思いつつも、関係ない人に当たるのはダメなので、一度気持ちを落ち着かせてから、返事をした。
「なんでしょう?」
そう聞くと、彼女は先ほど、質問してきた時の表情と全く変わらない状態で口を開いた。
「今は別れていても、貴方と彼女さんはまた付き合います。」
「は?」
あまりにも根拠がないことを言い出してきたことに驚いてしまい、自然と声が漏れた。
困惑している僕を気にせずに、彼女は話し続けた。話すにつれ、彼女はだんだんと興奮していっているように見えた。
「何度すれ違っても、何度別れてしまっても、貴方達はまた付き合います。貴方達はそういう運命なんですよ!だって、それが"神様"が望んでいる終わりなのですから!!!!」
「何を言って...」
彼女の狂った考え、信じ込みに恐怖心を覚える。そのため、聞き返す声が蚊の羽音ぐらい小さくなった。
自分の言いたいことを言い終わったのか、看護師は、僕を完全に無視し、「失礼します」とだけいい、出ていってしまった。
(なんだったんだ...貴方達って、遥を知っているのか?)
謎の看護師との対話は、恐怖心と、不安のみを植え付けられただけになり、得たものは何もなかった。
とりあえず、分かったことがひとつある。9日間の眠りから覚めたばかりなのに、僕が休めるなんてことはないらしい。これも、僕が大好きな人を泣かしてしまった罰、自分自身に嘘をつき続けた罰なのだろうか...
僕が許されるのはいつなのだろうか。
そんな考え事をしていたら、だんだんと視界が揺らぎ始めた。多分、いきなり頭を使い過ぎて、体力を消耗したんだと思う。
パチリ
バチパチパチ
視界がぼやけるにつれて、瞬きの回数も増えていく。それに比例して、頭もぼーっとしてきた。
(遥、何してるかな...)
最後には、無意識にそんな事を考えながら、僕は眠りについた。
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病院で書く事ないし、皆さんもおもろないと思うので、次からもう学校に復帰させる予定です。また少々お待ちください。
後、こんだけあげるの遅くなったわけですが、考えが完全にはまとまってません。てか書いてみないと分からない。ので、今後も少し変わる可能性あるのをどうかご理解していただきたいです。よろしくです。
追記
一つ提案したいことが...
ちょっとやり直してもいいですか?期待してたのと違うと言う声もありますし、僕自身今の書いてて面白くないので...消すのはめんどいんで新しく作ってそこで書くみたいな...
いつからか離れていった君へ (旧) 色彩 @tyokosora
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