第2話  そば屋

 通りに戻って帰路につく。

 しばらく走るとそば屋の看板が見えた。

 車の速度を緩める。


「こんなところにそば屋があったんだな。

 しかもこの時間までやっているなんて。

 トラックの運転手向けかな」


 東海ではおなじみの営業中を知らせるパトランプもまわっている。

 間違えなく営業中だ。

 そば好きで、そば屋巡りなどもしている。

 ここにそば屋があるのは知らなかった。

 食べていくことにした。


 ドアを開けると小さなそば屋だ。

 老夫婦がやっているようだ。

 お婆さんにざるそばを注文して尋ねる。


「ここ、たびたび通るのですがそば屋さんあるの気づきませんでした。

 いつからですか」


「もう長いよ」


「そうですか。

 昼間は営業してませんか?

 この時間までやっているおそば屋さん珍しいですよね」


「そうだね。

 不定期でやってるからね」


「なるほど」


 そういうことか。

 美味しいと良いけど。

 趣味でこだわりをもってやっていて、不定期営業の店はある。

 少し期待していた。


 お婆さんがカウンターの椅子に座っているので声をかける。


「さっき、資材置き場のようなとこで、鎧武者を見かけたんですが」


 冗談のように言うと。


「そうかい」


 お婆さんは何事もないように返答した。


「何かイベントでもあるんですか」


「イベント?

 何もないよ。

 無事で良かったね」


「えっ」


「ここは関ケ原だからね。

 怨霊が蔓延っている。

 怪しいところに近づかない方が良いよ」


「またまたあ」


 ジョークだよな。

 お婆さんを見るとこちらをじっと見ていた。


「何か?」


「うちではやめておくれよ」


 その視線が俺の後ろへ向いていると気づく。

 振り向くと甲冑が目の前だった。


 シュッ


 ゴン


 音と共に首に冷たい物を感じ、景色が反転した。

 意識が飛んでいく・・・

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関ケ原の亡霊 ナイトトレイルランニング(Night trail running) 甲冑編 最時 @ryggdrasil

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