doüdyMonogatary

たんぜべ なた。

第1話 アリとキリギリス

 残暑の余韻を残しながらも、頬をくすぐる風は、既に秋の気配を覗わせます。

 さぁ、我々の足下に広がる小さな世界に目を向けてみましょう。


 そこにあるのは、冬に備えて一生懸命に準備をしているアリたち。

 そして、キリギリスは夏を謳歌すべく、ひたすら歌を奏でています。


 キリギリスの奏でる歌を聞きながら作業を進めるアリたち。

 キリギリスもアリたちの仕事を応援すべく、元気な曲を選曲しています。


 …そのように見えるのは、『doüdyドウヂ』という少年の勝手な解釈なのかも知れません。


 やがて、山々が赤や黄色、そして茶色に染まり始める頃、いよいよアリたちは忙しく働き、キリギリスは軽やかに音楽を奏で続けています。


 そして、白い綿毛のようなものが曇天の空から振り始める頃、アリたちは巣に籠もり、冬支度も本格化してきます。

 キリギリスもそろそろ店仕舞いをして、旅支度を始めました。


 しかし、今年の冬は寒すぎるようです。

 身動きのままならなくなったキリギリスは、仕方なくアリたちの巣に向かいます。


 アリの巣の玄関で、キリギリスは屋内のアリに語りかけます。

「どうか、一冬停めて頂けないだろうか?」

 屋内のアリが答えます。

「すいません、私たちも食べる事に事欠いている状態なのです。」

「そうか…。」

 キリギリスは、ため息をついてアリの巣から離れようとします。


 そこに居合わせた『doüdyドウヂ』という少年。

 彼はアリの巣に、一言二言言葉をかけます。


 逃げることも叶わず、アリの巣の前で座り込んでしまうキリギリス。

 やがて、『doüdyドウヂ』が立ち去ると、アリが巣から出てきます。


「食べ物が見つかりました。

 お客様、お食事をご所望であれば、どうぞこちらに。」

「ご相伴にあずかろう。」

 キリギリスはゆっくり立ち上がると、促されるままにアリの巣へ入って行きました。


 それ以降、キリギリスの姿を見たものは誰もいません。

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