三段腹と、恋愛小説。
体育館の照明が落ちる。見慣れたタイル、バスケットコート、壇上。すべてが暗闇に包まれる。突如、スピーカーから雑音交じりの声がする。
『さあ、わたしを見つけてごらんなさい・・・・・・』。
「ムリ。攻略本失くしたもん」
『はあっ!?』
「そんなキンキン言わないでよ。失くしたものは失くしたんだからさぁ」
『あんたね・・・・・・いいわ、とりあえず××部屋の引き出しに鍵が入ってるから、まずそれを取りに行きなさい』
移動。廊下には、無数の看護ベッドが、対になって並んでいる。
不自然にうごめくシーツの中から、ぼたぼたと血しぶきが零れ落ちる。
「ねー。なんか食べ合いしてるっぽいんだけど」
『ああ、そこはバイオ〇ザードなのよ。立って歩くと捕まっちゃうから、這っていきなさい』
「(めんどくさ・・・・・・)わかった」
しぶしぶかがみこみ、地面に這いずる。動きが止まる。
『・・・・・・何?』
「ごめん、最近太っちゃって。お腹がつかえて隙間通らない」
『はあああああっっっ!!!??』
彼女は三段腹だった。
※
起床。うたたねしたときに見た、今日の夢の話である。
本当はもっとまじめな話を書いていたのだけれど、あまりに何も浮かばないので「もうエッセイなんて止めだ!」と思って、某恋愛小説家のエッセイ集を読んでいたら、
こてんと眠ってしまった。
いったいどこをどう転がったら、恋愛だの感傷だのの文章がこんな三流チンドン屋小説のような夢に成り下がるのだろうか。それに、確かに最近痩せにくくはなってきたけど、さすがに自分は三段腹ではない、断じて。
夢の研究によれば、夢は日中の記憶の
そもそもがなんだ、いちおう急に(体育館に)閉じ込められたっぽい設定なのに、「攻略本失くした」の一言で片付くのは。しかもそれで、たぶんラスボス的な位置にいたであろう(スピーカー越しの)彼女が、あっさり世話焼き役に転身しているのも、雑すぎる。子どもの頃の学芸会のほうが、千倍よく出来上がっている。
ずいぶんB級な夢を見てしまったが、そういえば最近こういうくだらない発想が何にもなかったなぁと思い始めた。
これも諸説ある夢に関する一理論なのだけれど、夢に出てくるキャラクターは、すべて夢主(夢を見た人)の一部分を象徴しているのだとか。
私は何本か前のエッセイに「遊べない」という悩みを書いたのだが、窮屈さに耐えかねて、代わりに脳が勝手に遊び始めたのかもしれない。
なーんだ。解決。
にしな書き。 西奈 りゆ @mizukase_riyu
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