第8話

「う~ん……。どうしよっかな~」


 毛利水軍が、大阪湾に布陣して来た。木津川口の戦いになんのかな?

 堺に荷物が入らなくなって、畿内は大騒ぎだ。

 物価の上昇が止まらない。


 お館様は京に戻っちゃったし、俺は石山本願寺から動けない。つうか、復旧の最中だ。


「俺の知る歴史だと、寺は燃やされて、大阪城が建つんだよな~」


 若干と言うか、大分歴史にズレが生じて来た。

 まだ、武田が生き残っているから、お館様は毛利に兵を割けない。秀吉さんが、担当になるんだけど、武田の調略中だ。


「え~と、毛利水軍と雑賀衆って、正親町天皇の勅令で和議が成立するんだよな~。どうすっかな~」



 ここで、荒木村重さんが来た。石山本願寺から近い有岡城の人だ。


「信長裏切らない? 今なら毛利が、京を攻め落とせるばい。佐久間家と毛利家で天下が取れっど」


「この、ど阿呆~!」


 一刀両断にする。言語道断だ!

 裏切りが当たり前の時代だけど、相談する人を考えようね。俺、織田家の最古参よ。首を京へ送る。

 そうすると、池田氏が有岡城に入った。まあ、殿の采配だな。荒木さんって手柄があったけど、昔の主君をないがしろにすんのはどうかと思っていた。



 それよりも、毛利水軍だ。とりあえず、カノン砲で威嚇する。毛利水軍は、攻めて来ない。そりゃそうか、陸上戦になったら不利だよね。織田水軍もいるけど、来ないな。完全に任されていそうだ。

 う~ん。堺の納屋衆に手紙を書いてみるか。


『毛利さんが邪魔じゃない? 手を貸すよ? 佐久間信盛より』


 返事は、すぐに帰って来た。


商人あきんどなめたら、あきまへんで! みてなせへん! 納屋衆より』


 怖い人たちみたいだ。

 金品を送る。もうね、城が建てられるぐらいの援助を行う。

 茶器も買ってあげる。


「殿……。お金がもうないっす。戦ができません。なに無駄使いしてるんですか?」


「敵の敵は、味方だよね~。困っている時に援助なのよ~」


 俺は、スッカラカンになったので、今度は、お館様にお願いしてみる。そうすると、お金をくれたよ! それと、堺の納屋衆と話し始めた。


 しばらくすると、毛利水軍が撤退した。どうやら、堺の納屋衆が動いたらしい。

 スペインとか明を味方につけて、毛利水軍を攻撃したんだとか……。怒らせちゃいけない人たちだよね……。


 数ヵ月後、お館様から連絡があった。

 これでとりあえず、毛利との和議が結べたそうだ。織田軍は、武田の調略に集中できんだろう。それと、織田水軍が残ったのは大きいな。


「それにしても、歴史を変えすぎると苦労するんだな~」


 お館様が、堺の納屋衆に戦争を依頼する歴史は、知らなかったな~。

 スペイン船とか明船が、味方になってくれた歴史も、聞いたことがなかった。





 今日は、久々に重臣一同が会する日だ。

 まだ、武田は滅んでいない。丹波も平定されていない。上杉も毛利も健在だ。

 それでも、お館様は、ご機嫌だな。

 自作したカノン砲を献上したからかな。未来の武器なんだ、役立って貰おう。

 あ……、長篠の戦の三段撃ちが変わってしまう可能性もあるな。今更だけど、歴史の過剰な改変を行うと、未来が分からなくなってしまう可能性がある。

 ちょっと、考えるか。


「信盛、前に出よ!」


「ははっ!」


 広間の中央に座る。


「信盛の活躍は比類なし! 皆の者、信盛を見習って働け!」


 お館様が、扇子で膝をパンと叩いた。


「「「はは~」」」


 おう? 評価が変わってんじゃん?

 皆が、頭を下げる。あれ? 俺、家臣筆頭?



 つうか、言わせたぜ!

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【19ヶ条の折檻状】を受け取らないために~佐久間信盛は働いてんだよ!~ 信仙夜祭 @tomi1070

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