第7話

 カルバリン砲の設計・製造に入る。

 設計図を書くけど、一発で火縄銃百発くらいの火薬を使うんだな~。


「弾は、ミニエー弾丸にして、ライフリングも欲しいな~」


 火縄銃には、ネジ機構があるので、現在の日本でも簡易的なライフリングは作れるはずだ。


「殿……。この弾は? 先端が尖っている意味ってあるんですか? これを飛ばすつもりですか? つうか、飛ぶんですか? 丸い方が良くないですか?」


 設計図を見せると、突っ込みが来た。

 全長4メートルの砲身の設計図を見ると、家臣が絶句しているよ。

 そうだよね~。カルバリン砲が日本に入って来るのは、大坂冬の陣の頃だ。40年後かな~。

 西洋では、建造されている頃かな?

 ミニエー弾丸は、もっと後のはずだ。

 それとニトログリセリンは……、止めておこう。


 考え直して、野戦砲の設計図を書くことにした。車輪付きの大砲だな。この時代だとカノン砲かな?

 幕末だと、こちらの方が主流だ。移動式だと、効率が良いのもある。

 カルバリン砲とアームストロング砲は、船だよね~。

 数キロメートル飛ばすんじゃないんだ、小型でいい。


「うん、これで行こう」


 設計が決まった。

 家臣たちは、絶句しているよ。作るのは、君たちなんだよ? 大丈夫?



 製造には、技術的課題が山積みだった。まあ、当たり前か。

 鋳物で砲身を作るけど、罅が入る。冷却方法を試行錯誤して、なんとか試作品が完成した。

 簡易的に、ライフリングを彫る。溝は3本とした。


「そんじゃ撃ってみて~。爆発するかもしれないので、みんな離れてね~」


 火薬で作った導線に火がつけられる。


 ――ドカン


 発射はされたけど、砲身が爆発した。


「強度不足か~。もうちょっと、肉厚にしようかな? もしくは、火薬の量を減らすか~」


 鍛冶師と相談する。炭素を増やして固くした方がいいとか、もっと柔らかい方がいいという人もいる。

 火薬量の調整も行う。

 500メートルくらい飛べば、実用性がある。

 最小限の火薬量にすれば、砲身が持つと思う。一発のみの使い捨てではなく、数発は撃てる設計にしたい。





 一年後、10門が完成した。弾は200発だ。

 火薬も十分にある。

 砲身の先を、石山本願寺に向けた。


「そんじゃ、一斉掃射、一回目ね~」


 ――ドン……ドカン


「命中8! 残り2は、塀と門に命中しています」


「殿! 今なら歩兵で落とせます!」


 う~ん。どうしよっかな~。

 石山本願寺の本殿が、崩壊しているよ。人の動きも見える。


「もうちょっと、様子を見よっか~」


 夜中に、一斉掃射二回目を行う。三回目は、ご飯時かな? 火事でも起きてくれれば、それで詰みだ。

 そんなことを考えていると、顕如から手紙が来た。


『降伏するばい。撃たないで! 顕如より』


 お館様に手紙を送る。

 そうすると、京から来てくれたよ。


「なんだこれは? 作っただと?」


 カノン砲を見て、お館様が驚いていた。

 そうだよね~。本当は、織田水軍を作って、毛利水軍を打ち負かす予定だったんだもんね~。これは、未来の武器になるから驚くよね~。


「移動も可能です。射程と命中が問題ですけど、練習すれば安定すると思うっす」


 試しに一発撃ってみる。石山本願寺に命中した。お館様が歓喜する。砲手には、お館様から褒美が出たほどだ。


「これ頂戴」


「石山本願寺が降伏したら、お渡しします。設計図はあるので、増産しますね」


 狂喜する、お館様もとい信長さん。怖いっす……。

 その後、顕如と織田信長の間で協定が結ばれた。顕如が、石山本願寺から出て行くことで纏まったんだ。


 こうして、石山本願寺が陥落した。



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